- 2006/08/21 掲載
【Web2.0特集】Web2.0時代のインフラとオープンサービスの登場
Web2.0
Participation Age~情報の時代から参加の時代へ
Web2.0周辺にはさまざまなキーワードが存在するが、その中でも「参加型」のアーキテクチャというところは、ITインフラの変化を理解する上で非常に重要だ。サン・マイクロシステムズでも、昨年のJava開発者向けカンファレンスJavaOne 2005において、CEOのジョナサン・シュワルツ(当時COO)が「情報の時代(Information Age)から参加の時代(Participation Age)へ」というビジョンを打ち出している。
この「参加の時代」は、決してブログに代表されるコンシューマの世界だけに起きている変化ではない。エンタープライズ・コンピューティングのインフラ部分でも、数年前から着実に進行してきた。その最たる例がFOSS(Free Open Source Software)、いわゆるオープンソースである。たとえば、5年前にはベンダー各社が独自にJavaのフレームワークを出し、その優劣を競い合っていた。それが今では、ほとんどのベンダーにおいてStrutsやHibernate、Spring Frameworkなどのオープンソース製品の採用が主流になっている。
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マーケティング統括本部 ストラテジック・マーケティング統括部 ストラテジスト 藤井彰人氏 この記事の内容は ストリーミングでも視聴できます。 |
パッケージビジネスからネットサービスに
オープンソースの普及は、従来型IT産業の収益モデルを大きく変える。これまで多くのITベンダーは、ビジネスのアイデア、知財をソフトウェア製品としてパッケージで販売し、そのライセンス収入で事業を成り立たせてきた。しかし、すでにソフトウェア業界でこのモデルは破綻しつつある。私自身、5年前にはアプリケーションサーバを1CPU500万円で売っていた。今ではそれが、オープンソースで無料で手に入る。最近ではSOAのソフトウェアが高価格帯で売られているが、これも5年もすれば無料になるだろう。
Web2.0企業の成功例を見ても分かるように、今日のITビジネスは、従来のパッケージ型からインターネットを介したサービスとして提供するSaaS(Softwear as a Service)に変わってきている。サービスのプロバイダにとって、個々のソフトウェアはサービスを提供するためのインフラであり、サービスレベルに応じたものであればよい。そこで、小規模な構成から始められるオープンソースの活用が大きなメリットとなる。
すでにエンタープライズ分野においても、SalesforceをはじめとしたSaaSの活用が始まっている。システムを「資産」として原価償却していた時代から、資産を持たずにネット上にあるさまざまなサービスを「経費」で利用する形態に変わりつつあるのだ。
重要なのは標準化されたコンセント
いつの時代も産業というのは、カスタマイズ、標準化、ユーティリティ化という流れを辿る。そして、標準化が済んでユーティリティ化されると、その周辺により大きなビジネスが生まれる。たとえば電気産業では、発電機が発明された頃は配線から電球取り付けまでカスタマイズだった。それが標準化されたコンセントで誰もが電気を使えるようになり、巨大な家電ビジネスが育った。IT産業においてもユーティリティ化が促進されれば、インターネット上でサービスを提供するネットビジネスはさらに大きな産業になり、それを支える技術もより重要なものになるだろう。ここで必要なのは、標準化されたコンセントとその後ろに控える発電所であり、安くて小さな発電機ではない。
サンでは、Javaをコンセントの仕様のようなものと考えている。GEがコンセントの仕様に課金しないのと同様に、我々はJavaに課金しない。さらに、ほぼすべてのソフトウェアをオープンソース化した。これらをインフラとしてJavaの周辺でさまざまなビジネスが勃興していけば、自然にサンのビジネスも成り立つような形を目指している。
オープンソースの次はオープンサービスの時代
サービスが主役となる時代のインフラのあり方を考え、サンはハードウェアにおいても新たな取り組みを開始した。1つがハードウェアのTry & Buyで、ソフトウェア製品のように60日間の試用期間を設けたプログラムだ。また、現時点では米国のみのプログラムだが、ハードウェアと必要なミドルウェアのリソースをネットワーク経由で提供し、トラフィックベースで課金するという新たなモデルも展開している。
オープンソースを活用したネットサービスは、今後さらに増加するだろう。そして、サービスの乱立、競争から標準化を経て、その次に来ると考えられるのが「サービスのオープン化」だ。オープンサービスでは、開発者がサービスレベル/管理の共通パターンを作成し、コードだけでなくサービスのプロトタイプも公開する。それによって、オープンソースベースのサービスを共有、実行できる場が提供される。サンの米国CTOでは、3~5年後にはこうしたオープンサービスの流れが来ると予測している。
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