- 2006/06/23 掲載
NEC、世界最高レベルの通話品質向上技術を開発
IPネットワークで高品質な音声コミュニケーションを実現する
NECはこのたび、自社の音声コーデック技術・音響処理技術・通信処理技術を結集して、パケットロスが多発するIPネットワーク環境でも音切れ・無音などの音質劣化のない高品質な音声コミュニケーションを可能にする世界最高レベルの通話品質向上技術(VoIPミドルウェア)を開発したと発表した。
このたび開発したVoIPミドルウェアの主な特長は以下の通り。
(1)パケットロスを短い遅延時間で回復し、音切れや無音による音質劣化を防ぐVoIP用エラー訂正技術(FEC)を開発。パケットロスの影響を約1/10に低減し、客観評価(PESQ)でパケットロス10%時でも音質への影響がほとんどないことを実証。
(2)相手の声色までわかるクリアな音質の広帯域標準音声コーデックなど、ITU-T、3GPP標準の音声コーデックを複数採用することで、ネットワーク環境や品質に応じた選択が可能となり、利用者の要求に柔軟に対応。
(3)IPネットワークで生じるパケット到着時間の揺らぎ(ジッタ)だけでなく、PC上でのワクチンソフトによるウイルスチェックなど、負荷の高いアプリケーションが動作しても音切れしにくいジッタバッファ制御技術を開発。
(4)オフィスのエアコンやPCの雑音、ハンズフリー会議時のエコーを除去して、聞きやすい音声にすることができる音響処理技術(エコーキャンセラー、ノイズサプレッサ)を採用。
近年、IPネットワーク上で音声コミュニケーションを行うIP電話が企業や家庭に普及し始めている。整備が進みつつある次世代ネットワーク(NGN)では、ネットワークをすべてIP化し、固定通信・移動体通信に関わらず、IP電話・IPTV・映像コミュニケーションなどのIPベースのシームレスなコミュニケーションサービスの実現を目指しており、IP電話をはじめ、映像コミュニケーションなどを取り込んだリアルタイムコミュニケーションサービスのさらなる普及が見込まれている。同時に、企業のコミュニケーションの高度化が進み、PCで利用するIP電話(ソフトフォン)やWeb会議、所在情報(プレゼンス)、インスタントメッセンジャー、オフィス文書共有を連動させた音声コミュニケーションの普及が加速され、VoIPの利用シーンが高度化すると見込まれている。
このようにVoIPの利用シーンが拡大するにつれ、以下のような技術が望まれてきている。
(a)VoIP専用のネットワークではなく、他の通信データによってパケットロスが多発するネットワーク環境で使用しても、IPパケットのロスによる音切れなどの音質劣化が生じない通信処理技術。
(b)相手の声色まで伝送し、長時間通話でも疲れにくい音声品質を実現する広帯域コーデック技術。 (c)PCで稼動するソフトウェア負荷の影響による、VoIPの音切れや無音を軽減する通信処理技術。 (d)スピーカーの音の漏れ込み(エコー)や周囲の雑音(環境ノイズ)を除去し、クリアな音質を実現する音響処理技術。
従来からVoIPの音質向上のため、通信処理(パケットロス、ジッタ処理)、音響処理(エコーキャンセラ、ノイズサプレッサ)、互換性のない特殊な専用音声コーデックなど、各種の要素技術が開発され、個々に音質向上を図ってきた。しかし、各種の要素技術を統合した総合的な音質向上対策がなされておらず、パケットロスが多い環境などでは十分な効果が上がっていなかった。
このたびの開発は、これらの要素技術をVoIPミドルウェアとして統合し、通信処理、国際標準コーデックと音響処理によって通話品質を改善できることを検証したもので、次世代ネットワーク(NGN)を活用したさまざまな高品位サービスを実現するための基盤技術である。これにより、世界最高品質のIPベースの音声コミュニケーションを実現できるという。
この技術では、インターネット上のストリーミングプロトコルとして一般的なUDPを用いた音声コミュニケーションの高品質化を実現した。NECは今後、ファイヤーウォールなどの影響でUDPが利用できない環境でも高品質な音声コミュニケーションを可能とするため、同社中央研究所で開発した「TCPを用いたストリーミング品質向上技術」を利用して、VoIPミドルウェアの開発を進めていく予定である。
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