- 2005/08/30 掲載
運用管理・コストの負担をかけずに推進するIT化の提案【第2回/全2回】
4、IT成熟度から見るとこうなる
次にIT成熟度から見てみる。IT成熟度とは全社的にITの利用スキルをどのくらい持っ ているかを表す指標である。要求するSLAが低い場合、高いIT成熟度を持っていれば自 社運用は可能である。しかし要求するSLAが低くとも、IT成熟度が低い場合は自社での運 用は難しいであろう。要求するSLAが高い場合は、たとえIT成熟度が高くとも専門会社 に運用を任せた方が良い。
5、システム構築方法も運用に影響する
ここまでは運用だけに着目して最適な運用選択肢を見てきた。次に、運用にも関係して くるシステムの構築方法について考えてみる。
システムの構築にとって非常に重要なのはどのような目的の為に情報システムを利用す るのかである。まず目的を大別して考える。一つは外向きの戦略的なシステムか、もう一 つは内向きのコストダウンのシステムかである。
外向きの戦略的なシステムの場合は「どこにも存在しない自社固有の戦略システムを利 用する」ことが重要であり、このようなシステムはオーダーで作らなければならない(オ ーダーメイド・ソリューション)。もし、パッケージのように誰にでも購入できるシステム であれば、すぐに他社も導入することができ優位性が失われてしまうからである。もちろ んオーダーのシステムは開発費も期間もかかることとなる。そこで重要となるのはRFP(要 求仕様書)である。これは、開発する機能から運用条件までを明文化したものである。開 発コストや開発期間を無駄にしないためにも明確な要求を出す必要がある。また、運用に おいては戦略実現のためのSLA確保を第一に考えた運用を行わなければならない。決して コスト優先の運用を行ってはいけない。
内向きのコストダウンのシステムの場合は「業務最適化を目指したシステム構築」であ り開発の段階からコストを考えていなければならない。すなわちよほどの事情がない限り オーダーで開発することはないのである。業務用のパッケージが販売されている場合は、 パッケージの選定を考えてみるべきである。このパッケージの選定においていくつか注意 しなければならない点がある。ひとつは、機能の多さに惑わされないことである。我々は 家電を購入する場合にも機能を比較することが多い。しかし、すべての機能を使うことが ないのが現実ではないだろうか。パッケージにおいても利用しない機能が多いことは、運 用が煩雑になったり利用者の教育事項が増えたりと、いいことばかりではないのである。
次に注意しなければならないのは、パッケージの自社向けのカスタマイズは最小限に抑え、 業務をパッケージに合わせることを考えるということである。パッケージはその開発に当 たってパッケージベンダーが業務の最適化を行い、そのフローを実現しているのである。 コストを重視する業務においては今までのやり方に固執せず、パッケージに合わせる事が コストも含めた最適化に繋がるのである。またパッケージによりシステム導入費用を低く 抑えたとしても、運用コストが高いパッケージでは結局コストアップになってしまう。パ ッケージ選定のときから運用コストを意識しなければならないのである。
さらに、中堅中小企業ではパッケージではなくサービスベンダーのASPサービスを利用 することも一考である。この場合、前述のSLAを明確にした契約をサービスベンダーと取 り交わすことが重要となる。
6、ワンストップITソリューションの必要性
これまでの説明で、システムを利用する目的の重要性と、それによってどのようにシス テムを構築するか、そしてどのような方法で運用するかが決まってくることを説明してき た。また、そこにはコストや自社のIT成熟度なども絡んできた。実にさまざまなことが絡 んでいるのである。【図表5】の情報化の進め方と検証に示したように、経営戦略に沿って 情報化戦略が明らかになり、情報化戦略によってシステムが構築されるわけであるが、運 用に入ると情報化戦略によって明確にしたRFPやSLAが満たされているのかが検証でき る。また、運用の結果得られる経営活動の結果が、経営戦略を達成できたか否かを判断す る材料となる。
情報システム部門を持たない中堅中小企業では、開発における運用との関連性や、パッ ケージ選択条件や、運用における各種検証やモニタリングを専門に考える部署はないわけ である。
そこで重要となるのは、経営戦略から運用までをワンストップで提供するITソリューシ ョンであり、このような視点からソリューションを提供するベンダーも増えつつあるので 相談・検討してみるとよい。
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