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  • 2023/08/17 掲載

エアバス、2035年までに「水素燃料電池エンジンの航空機」を開発?脱炭素に向けた歩み

連載:「北島幸司の航空業界トレンド」

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今年のパリ航空ショーではインドLCCインディゴがエアバスに対して、史上最大の発注をしたことで、話題となった。大量受注の一方で、同社はことさら製造機数を追い求めることはせず、将来の脱炭素社会に向けた航空機製造の動きを進めているという。その理由と経緯を追った。
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飛行展示中のエアバスA321XLR
(写真:筆者撮影)

エアバスA320neoシリーズの躍進

 コロナ禍で航空会社は厳しい経営状況となる中、エアバスA320neoシリーズは、航空会社の燃料費削減と環境負荷の軽減に貢献した。革新的なエンジン技術と航空機の改良により、燃料消費量を20%以上削減できたという。  

 同シリーズは、ナローボディ機で燃費効率も良く、ワイドボディ大型機と比べ地上保管された機体は比較的少ないため、優位性が高い。航空需要の回復に伴い、多くの航空会社から注文を受けている。現在は派生形を生み、航続距離延長型のA321XLRの試験飛行も続く。

4人乗り、医療用…特別用途をもつ、エアバスのUAM

 エアバスは、パリ航空ショー会場内の展示「パリアーバンモビリティ」にて、都市部の新交通システムの取り組みにCity Airbusと名付けてUAMの研究を報告した。

 今年は、バージョンアップしたCity Airbus Next Generationをモデルとともに紹介した。エアバスのUAMの特徴は4人乗りであり、医療用という特別用途もある。また、STマイクロエレクトロニクスとの間で、航空機電化用パワーエレクトロニクス分野での提携を発表した。

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エアバスUAMのモデル
(写真:筆者撮影)

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「パリエアラボ」では脱炭素社会に向けた航空機メーカーの取り組みを紹介。地元エアバス一色の出展だった
(写真:筆者撮影)

エアバスの脱炭素に向けた歩み

 エアバスの脱炭素に向けたこれまでの歩みを時系列で並べると次の通りとなる。

 2017年、系列メーカーのサフランとともに、エアバスA320用の「電気地上滑走(eTAXI)システム」を開発した。まずは、空港で使用する作業車のグラウンドサービスエクイップメント(GSE)の開発から始動した。

 航空機の地上滑走は、プッシュバックはエンジン装備のトーイングカーで行われ、自走はエンジン推力で行われている。これを電動化することで、CO2削減に貢献するものだ。地上では飛行時ほどの推力は必要としないことから実現は早い可能性が高い。

 2021年9月には、脱炭素化の野望を強化するために「超高性能翼デモンストレーター」を発表した。セスナ サイテーション VII ビジネス ジェット プラットフォームに画期的な翼技術を統合し、種々の飛行条件で飛行した。

 そして、将来の航空機の翼の空気力学と性能を改善および最適化する技術を検証する。翼の形状を変えることにより空気効率が上がり、燃料消費が削減される場合がある。

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高性能翼のテスト機モデル
(写真:筆者撮影)

 また、2035年までに就航する可能性のある、世界初のゼロエミッション民間旅客機のいくつかの航空機コンセプトを「ZEROe」の名称でを発表。水素燃料電池や電動化技術の活用など、二酸化炭素排出量を極力削減するための研究を含み、2035年までに商業運航可能なゼロエミッション航空機の実現を目指す。

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ZEROeデモ機のモデル
(写真:筆者撮影)

 そのほか航空機の生産プロセスにおいて、省エネルギー・低排出量の施策を推進し、航空機のリサイクルや廃棄物の管理においても環境への配慮を行っている。

 さらに、昨年7月には、ファーンボロ航空ショーでエアバスとCFMインターナショナルが先進的な「オープンファンアーキテクチャの飛行試験デモンストレーター」を発表した。プロベラ機は小型機のものと先入観があり、大型のA380に装着された姿は異質に見えた。

 デモンストレーターは、他のターボファンエンジンとは異なりケースに囲まれていないため、「開いた」状態になっている。これにより重量が軽減され、ファンブレードを大幅に大きくすることができる。その結果、ファンはエンジンコアを通過するのではなく、エンジンの周囲にはるかに大量の空気を移動させることができるのだ。

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エンジンファンがむき出しのA380ベースのデモ機
(写真:筆者撮影)

 その後11月に、初のメガワット級「水素燃料電池エンジン飛行試験デモンストレーター」を準備中だと発表した。 【次ページ】エアバスA321XLR、ボーイングにはない魅力
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