なぜ台湾企業が「日本上陸の足がかり」に鹿児島県 錦江町を選んだのか
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台湾に広がる日本製アプリが日本市場を身近にする
ラージットデータ(大數軟體有限公司)は、SNSマイニングサービスを提供する台湾企業だ。SNSに飛び交う膨大なデータを分析し、その結果をニュースメディアやBIプラットフォーム、PRプラットフォーム向けに提供する。彼らにとって日本は身近な国であり、日常的に日本のサービスも使っているという。「楽天市場は台湾でも多くの人が使っています。他にもチャットワークやWebデザインツールProtなど、ビジネスでも日本製アプリが広まっています」(Ian Chen氏)
これら、日本発のITツール類がビジネスに浸透するに従って、彼らにとっても市場としての日本が身近になっていくことは想像に難くない。日本製アプリが台湾市場に進出するのと同じように、彼らも日本市場進出の機会を伺い続けていたのだ。
「SNSが中心ですが、楽天市場に出店している企業の顧客導線を分析するなど、オンラインデータを分析してブランディングを支援したりしています。サービス自体はモジュラー化されていて、多言語化にも対応しているので、日本語に対応すれば日本市場でも私たちの価値を見出してくれる企業はあると考えています」(Ho ChanHao氏)
錦江町はイノベーティブな活動をしやすい場所
実は筆者がインタビューの時間を得たのは、ラージットデータの面々が錦江町についたその日。まだ半日しか過ごしていないところで錦江町の印象を聞くのは野暮かとも思ったが、エンジニアとしてはいい場所だと、彼らは即答した。「ビッグデータの分析、SNSを飛び交う情報の分析を行なうシステムの開発では、ナーバスな問題も数多く出てきます。そういった問題を解決するにはエンジニアといえとクリエイティブでなければなりません。錦江町の環境はゆったりしていて、海も山も近くにあり、クリエイティブな仕事に必要な気分転換をしやすいのが魅力ですね。開発に行き詰まったら着替えてSUP(スタンドアップパドルボード)で気分転換ができる。そんな場所は多くありません」(Ian Chen氏)
滞在中の天気予報を気にしていたHeMu氏。実はインタビュー当日からしばらくは雨の予報であった。後日確認したところ、晴れ間を利用して、オフィスの目の前の清流でSUPをおおいに楽しんだとのこと、どうやらリラックスしながらクリエイティブに業務が出来たようだ。
九州南端の鹿児島は、台湾と東京の中間にある戦略的立地
お試しサテライトオフィス事業に応募した動機を聞いたところ、日本市場を狙う彼らの戦略が見えてきた。「台湾のITスタートアップイベントで錦江町の展示ブースを見かけたのがきっかけで、今回のトライアルが実現しました。日本市場への進出を考えると、マーケティング部隊は東京などの大都市に行く必要があります。我々エンジニアも日本にいた方がいいのは当然ですが、とはいえ地価が高く、台湾からも遠い東京にいる必要はありません」(Ian Chen氏)
将来は日本だけではなく、中国に向けてヘルスケアや災害情報などの提供を考えているとIan Chen氏。中国市場への進出というだけの意味ではなく、中国の情報を知りたいというクライアントが多いのだという。それは台湾企業だけではなく日本企業にも共通した要望だろう。
今回、ラージットデータはまず鹿児島県錦江町のサテライトオフィス利用にトライした。九州、それも南端に位置する鹿児島は台湾企業にとって日本進出の足がかりの地として魅力的なのだとIan Chen氏は言う。鹿児島空港と台湾を結ぶ航空便もあり、所要時間は約2時間。羽田鹿児島間が2時間弱で結ばれていることを考えると、鹿児島は台湾と東京の中間あたりに位置していると言える。マーケティングや営業を担当する人員だけを大都市に送り込み、エンジニアを鹿児島に配置するのは日本市場進出へのうまい手だ。
しかしこれには逆の見方もある。日本企業が台湾やアジア方面に進出する際、鹿児島を足がかりにすることも有効という訳だ。分野によってはすでに欧米よりもアジアの方が成長率は高い。そのような分野でアジア進出を考えるとき、アジアから進出してくる企業の手法は、おおいに参考になるはずだ。