- 2025/03/19 掲載
やや強めの賃金・物価と不確実性高まる海外、双方見極め政策判断=日銀総裁
Takahiko Wada Kentaro Sugiyama
[東京 19日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は19日、金融政策決定会合後の会見で、利上げを決めた1月会合時に比べて国内の賃金や物価は「やや強め」だが、世界経済の不確実性は増していると指摘した。政策判断に当たっては、国内・海外双方のバランスを見極めて行う考えを示した。
日銀はこの日、金融政策の現状維持を全員一致で決めた。声明文では、トランプ米政権の関税政策と各国の対抗措置が海外の経済・物価に及ぼす影響などをリスク要因に挙げ、日本の経済・物価を巡る不確実性は「引き続き高い」と指摘した。
植田総裁は会見で「現在の実質金利は極めて低い水準にある」との認識を示し、今後も日銀の経済・物価見通しが実現していけば、政策金利を引き上げて金融緩和度合いを調整していくと改めて述べた。
米政権が4月2日に発動する方針を示している相互関税を念頭に「4月初めに一定のところが出てくるかもしれないので、次回会合や展望リポートの中では消化できる」と指摘。その上で、経済・物価がどういった姿になるかはかなり先にならないとわからないとしつつも「政策がどう動くかなど、マインドの変化はある程度早めにわかる部分もある」話し、「手遅れにならないように配慮して進めていきたい」と述べた。
米国の関税政策がもたらすマインド面への影響については、日本の家計や企業マインドへの影響は4月初めに発表される政策の影響が大きいが、米国ではすでに消費者マインドに影響が出てきており「4月時点で非連続的に話が変わるわけでは必ずしもない」との見方を示した。
トランプ米大統領の円安批判についてはコメントを控えた。
<食料品の価格高騰、基調物価に「影響及ぼし得る」>
植田総裁は、足元の強い物価の伸びが「国民生活にマイナスの影響を与えていることは十分に認識している」と指摘。「コメを含む食料品などの価格上昇が、家計のマインドや予想物価上昇率の変化を通じて基調的な物価上昇率に影響を及ぼし得る点は認識しておく必要がある」と語った。総裁によると、決定会合で一部の委員から物価上振れリスクに注意したい旨の発言があったという。
基調的な物価上昇率については「徐々に高まってきているが、なお2%下回っているとの認識に変わりはない」とした。
連合が14日に発表した春闘の1次集計の賃上げ率は加重平均で5.46%と、1991年以来34年ぶりの高水準となった。植田総裁はこの結果について「1月会合時点の想定におおむね沿ったもの」と評価。中小企業の動向も含めて丁寧に確認していく必要があるとの認識を示した。
<長期金利、引き続き動向を注視>
足元の長期金利の上昇傾向については、最近のインフレや実質国内総生産(GDP)のデータ、直近の賃金に関する動き、ドイツの金利上昇などに反応しているというのが市場での見方と理解している、と語った。
長期金利は市場で形成されるものだが、通常の価格形成と異なる形で急上昇する例外的な場合には機動的なオペを実施することもあり得ると改めて述べ、「現状はそうした状況ではない」としつつ引き続き市場動向を注視していきたいとした。
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