• 2025/01/30 掲載

アングル:任天堂などコンテンツ株に脚光、ディープシーク波乱で際立つ強さ

ロイター

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Noriyuki Hirata

[東京 30日 ロイター] - ディープシーク・ショックに揺れた東京市場では、任天堂やサンリオといったコンテンツ関連株の強さが際立つ。需要が景気に左右されにくいと一般的にみられている上、日本が強みを持つ産業の一角として将来の成長余地も見込まれており「ディフェンシブ・グロース」の性格を持つ銘柄群としての認識が広がってきている。

ディープシーク・ショック下での物色動向について、岩井コスモ証券の有沢正一投資調査部部長は「半導体関連株は先が読みにくくなり、コンテンツ株への資金シフトが生じた」と指摘する。

中国の新興企業ディープシークによるAIモデルの台頭を受けて株式市場の波乱が強まった週明けの2日間に、日経平均は2.2%安となった。アドバンテストの18%安、東京エレクトロンの10%安などAI人気で買われてきた銘柄群の下落が目立った。

対して同期間のTOPIXは0.2%高となり、半導体株から他セクターへの資金シフトがうかがわれた。東証33業種別の上昇率の上位は、不動産4.7%、陸運3.4%、銀行3.3%などが並んだ。このうち不動産は「ショック時には公益関連株が選好されやすいが、電力株がAI関連と目されていただけに目が向かったのではないか」とアセットマネジメントOneの浅岡均ストラテジストはみている。銀行は前週末の日銀による利上げ後でもあり、買いが入りやすかった。

一方、上昇率4位には「その他製品」が2.6%高でランクイン。同セクターに分類される任天堂が3.6%高、バンダイナムコホールディングスが3.5%高となった。他のセクター内でも、ソニーグループの3.2%高、東宝の2.4%高、サンリオの1%高などコンテンツ関連と目される銘柄の上昇が目立った。総じて日経平均に対し逆行高となった上、TOPIXの上昇率を上回った。

要因の一端を担うのが、そのディフェンシブ性との見方がある。足元でくすぶる複数のリスク要因への耐性が意識されている。

ゲームやアニメといったコンテンツの売り上げは、そもそも「景気に左右されにくい」(岩井コスモの有沢氏)とみられている。AI市場では既存のビジネスルールが根本的に変わりかねないとの警戒感が浮上したが、コンテンツビジネスはその影響を受けにくいともみられている。

トランプ米大統領による高関税政策が取り沙汰される中にあって「ゲームソフトは(配信用の)サーバーを米国に置けば影響を受けない」(東洋証券の安田秀樹シニアアナリスト)との受け止めもある。

<業績期待も後押し>

コンテンツは、ディフェンシブ性だけでなく業績への期待もある。

足元では、中国で春節(旧正月)に伴う大型連休に入り、インバウンド(訪日外国人)消費の伸びに期待が集まっており、テーマパークを運営するサンリオは関連株としての物色も意識される。

任天堂は、家庭用ゲームの次世代機「ニンテンドースイッチ2」の年内発売を発表した。来期には、発売から8年が経つ先代機からの販売台数の急回復が想定されている。このところ新作ゲームが乏しかったスクウェア・エニックス・ホールディングスなどのゲームソフト企業も、スイッチの刷新に併せてビッグタイトルを投入するとの思惑が浮上している。

24年度の任天堂は、現行スイッチのモデル末期に当たったこともあり「業績が振るわなかっただけに、来期の増益の変化率は大きくなりそうだ」と東洋証券の安田氏はみている。

アニメ産業も、中長期の成長を見込む声がある。日本動画協会の調べでは、2023年の国内企業の世界でのアニメ関連売り上げは3兆3465億円で、海外と国内の比率はおよそ半々となっている。海外比率は着実に高まる基調にあり「ゲームの内外比率程度に高まってもおかしくない」と内藤証券の田部井美彦投資調査部長は指摘する。

そのゲームの内外比率をみると、例えばスイッチの累計販売台数約1.5億台の内訳は海外が国内の3倍強で、関連ソフトは海外が国内の4倍強の本数となっている。さらに「新興国に販路を広げる余地はある」と東洋証券の安田氏はみており、スイッチ2は、世界で1.5億台売れたスイッチを大きく超え、2億台以上になる余地が潜在的にあるという。

相場全体が不安定な中にあってコンテンツ株は「しばらく堅調な地合いが続くのではないか」と岩井コスモの有沢氏はいう。ただ、ディープシークへの警戒感が市場で消化されたり、トランプ関税の道筋が見えてくるなど、足元で意識されているリスク要因が後退してくれば、資金のシフトは落ち着きやすいともみられている。

アセマネOneの浅岡氏は、目先は「2月1日にメキシコやカナダ、中国への高関税を米国が実際に発動するかどうかや、日米・米中の首脳会談などが焦点になるのではないか」と話している。

(平田紀之 編集:橋本浩)

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