- 2024/03/01 掲載
アングル:株価一段高のカギ握る春闘、脱デフレなら日経4万円は通過点
[東京 1日 ロイター] - 日経平均が4万円に接近する中、株式市場では目先は売り材料に乏しいとして、大台乗せは時間の問題とみられている。日本固有の要因として、3月半ばに春闘の集中回答日を控えており、これが一段高の起爆剤になり得るとの思惑がある。大幅な賃上げとなって脱デフレが展望できれば、息の長い株高になり、4万円は通過点に過ぎなくなるとの見立てだ。一方、急ピッチな上昇への警戒感も根強い。
<あと10円、踏み上げも>
1日の東京市場では、日経平均が4万円まで10円足らずまで上昇する場面があった。急ピッチな上昇に「違和感はあるが、特にアクティブ投資家を中心に持たざるリスクが意識されている。踏み上げも入っているとみられ、4万円上抜けはあり得そうだ」(三木証券の北沢淳商品部投資情報グループ次長)との声が聞かれる。
日経平均の史上最高値更新のカタリストは前週に発表された米エヌビディアの好決算だったが、ここから一段、上昇に弾みをつけそうなイベントとして、3月半ばに集中回答日を控える今年の春闘が有力との見方が高まっている。 SMBC信託銀行の投資調査部長・山口真弘氏は、デフレ脱却と賃金上昇は日本株固有の材料だとして「仮に米株が調整局面に入っても、賃金と物価の好循環が再確認されれば、日経平均が4万円に向かう手掛かりになってもおかしくはない」と語る。 先立つ2月21日には自動車大手のホンダとマツダが、組合要求に満額回答した。大手メーカーから早期に前向きな結果が出たことで、中小企業や他産業の交渉に好影響が波及するとの思惑がある。 2023年の春闘の賃上げの平均率は3.58%だったが、今年はそれを上回る高い伸びになると市場では見込まれている。 <利上げ視野でも「恐れる必要なし」> 賃上げ基調の強さが確認されれば、日銀による早期の政策正常化への思惑が強まりやすい。従来のセオリー通りなら、短期的には、金利上昇への思惑から銀行や保険が買われやすい一方、利払いが増える不動産株や円高を嫌気する輸出関連株などは、売り圧力が強まりかねない。 ただ、日本経済の構造変化に海外投資家から熱視線が注がれている中では、異なる反応になる可能性がある。デフレ脱却が視野に入ってくれば、日本株に対し「海外勢を中心に評価の対象となりやすい」(いちよし証券の投資情報部・及川敬司氏)という。 米運用会社ニューバーガー・バーマンの岡村慧ポートフォリオマネージャーは、賃金とインフレが同時に上がる好循環、企業による資本効率化の取り組み、地政学面での優位性の観点などから海外投資家は日本株に着目していると指摘する。
日経平均が史上最高値を34年ぶりに更新した2月第3週(2月19日─2月22日)の投資部門別売買動向では、現物株は海外投資家が8週ぶりに売り越しとなっており、海外勢の買い一服を警戒する声もある。
ただ、持続的なインフレにとって春闘は重要な要素となる。ニューバーガー・バーマンの岡村氏は「まだ買っていない海外投資家もいる。内容次第では、資金流入の余地はあるだろう」とみている。 足元では、国内の物価上昇に賃金の伸びが追いついていない様子がうかがえる。受け取った給与の「名目賃金」から物価変動の影響を差し引いた「実質賃金」は、昨年12月まで21カ月連続のマイナス。これがプラスとなり増えていくなら、国内消費は喚起され「内需企業の業績改善の思惑につながる」と、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーはみている。 従来は、内需の強さに伴う「デマンドプル」型インフレへの市場の確信が乏しかったことが、不動産株売りなどの反応を引き起こしていた側面がある。確信が強まれば、金利上昇の際に売られてきた不動産株も、資産価格上昇への思惑から堅調な推移が見込まれている。 日銀の金融政策を巡っては、足元では3─4月会合でのマイナス金利解除の織り込みまでは概ね進んでいるが、マイナス解除後のプラス圏での利上げの織り込みは、まだ進んでいない。 仮に、先行きの利上げが意識されるようになったとしても、インフレ好循環の確度が高まるなら「過度に恐れる必要はない」と、しんきんAMの藤原氏は指摘する。「むしろ好景気入りの証と捉えられる。4万円は通過点に過ぎなくなり、2―3年は継続する息の長い株高が視野に入ってくる」という。
ただ、1日のプライム市場の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数はきっ抗。大型株偏重の株高に「値下がりが半数を占めながら700円高というのはどうかしている」(国内証券のアナリスト)との声も漏れる。「裾野が広がらずに一本調子で上がっていくと反動が大きくなるリスクが高まり得る」(三木証券の北沢氏)との警戒感もくすぶる。
為替の動向への目配りも必要となる。北沢氏は「春闘の良好な内容を受けて為替が円高基調に転じる場合、業績への悪影響が警戒されてきかねない」と指摘している。
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