- 2023/09/07 掲載
マイナス金利解除、頑健な経済や賃金への期待が必要=中川日銀委員
Takahiko Wada
[高知市 7日 ロイター] - 日銀の中川順子審議委員は7日、高知県金融経済懇談会後の記者会見で、マイナス金利解除の条件について、多少の下方圧力にも屈しないほどの経済の強さや、賃金への期待が維持できることを挙げた。一方、先行きの物価見通しはリスクが上下に同程度の大きさで存在すると述べ、まだ2%目標の達成を見通せる状況にはなっていないとの見方を示した。
中川委員は、イールドカーブ・コントロール(YCC)の解除やマイナス金利の撤廃をどういう順序で行うかは市場環境や金融環境に左右され、明確な順序やタイミング、インターバルの取り方は「言える状況にはない」と述べた。
その上で、マイナス金利の解除の条件として、経済について「多少の下方圧力を受けても回復力がついていること」を挙げたほか、賃金では「今後への期待をある程度広い方々が望むことができる循環がある程度保たれること」が必要だと述べた。こうした条件がそろえばマイナス金利の解除を「あまり心配なくできる」が、判断は慎重に行いたいと語った。
物価目標達成の見極めについて、来年の春闘だけではなく「それ以外の情勢も見極めたい」と述べた。春闘で良好な結果が出ても、中小・零細企業を含めて高い賃上げ率が期待できるわけではないとした。「ある程度物価が上昇した局面が来て、自分の給料・ボーナスがある程度遅れるにしてもついてくる。あるいは企業側からすれば年1回物価などの情勢を見て賃金を改定しないといけないという習慣がつくことが重要だ」とも話した。
日銀の8月調査の債券市場サーベイでは市場機能度判断DIが改善した。中川委員は「改善したからいいと思っているわけではなく、ある程度マーケットの方々には機能度に関して窮屈な思いをさせているだろうとは認識している」と指摘。金融緩和継続のメリットと市場機能への悪影響を天秤にかけて優先順位をつけていると話した。
為替の水準や評価については具体的なコメントを控えた。その上で、為替は経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要との考えを示し、政府と緊密に連携しながら「金融・為替市場の動向や、それが日本経済にどういった影響を及ぼすのか注視していく」と述べた。
(和田崇彦)
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