- 2023/09/01 掲載
インタビュー:処理水問題、長期化なら中国投資に影響も コミットは不変=サントリーHD社長
[東京 1日 ロイター] - サントリーホールディングスの新浪剛史社長はロイターとのインタビューで、中国経済は「非常に厳しい状況にある」と述べ、若者の就職難など国内の不満が日本の原発処理水放出への反発につながっているとの見方を示した。中国市場へのコミットメントは変わらないと強調する一方、処理水を巡る問題が長引けば投資計画を遅らせる可能性もあるとした。
新浪社長はサントリー製品への影響について、中国当局から処理水の影響がないことを示す証明を求められていると説明。「今までにそういうことはなかった」とし、「客観的にいろいろな形で説明はしている」と語った。処理水放出を巡る問題が長期化するようなことがあれば、「エグゼキューション(投資などの実行)を遅らせる必要性があるかもしれない」と述べた。
例えば現地で販売好調なウーロン茶について、生産増強を自前でやるか現地企業に委託するか、「見極めの期間が必要になったかなと思っている」とした。放出する処理水は国際原子力機関(IAEA)が安全性を認めており、「国際ルールでオーケーなものがだめという国は投資ができない。そうならないことを願っているが、そういう判断を今後していかないといけない」と語った。
一方で中国市場は重要だとし、「しっかりとコミットしていきたいと思っている」と強調。「そのコミットメントを揺るがすようなことが起こるというのは大変遺憾」と語った。現時点で不買運動が起きたり、販売への影響はないという。「不買運動の流れを作りたいという(中国当局の)意図は感じない」とも語った。
経済同友会の代表幹事も務める新浪社長は、処理水放出後に中国から日本への迷惑電話などが相次いでいる背景について、中国経済の不振のはけ口になっている可能性があると分析。「非常に経済も厳しい状況にある。若い方がなかなか就職できないなど、国内に抱えるストレスの可能性もあると思う」と述べた。
中国経済には「相当懸念を持っている」とし、「日本と同じようにデフレに陥ってほしくないが、そういう傾向が出てくる可能性がある」と語った。減税や企業活動の活性化などの経済対策が必要だが、「今は少し違った方向に行っているのかなという感じはする。成長率が中国政府の計画を下回る可能性がある」と述べた。
ロイターが8月に実施した日本企業256社への調査によると、中国政府が掲げる5%前後の成長を達成できると回答したのは7%に過ぎず、46%は達成できないとみていた。中国の成長力に疑問符が付く中で、中長期的に中国市場の重要度が低下するとした企業は19%に上った。
新浪社長は、中国当局がIT企業への規制を一時強化したことを挙げ、「昔は深センで自由に起業ができたが、今では萎縮してしまい経済のダイナミズムが阻害されている」と述べた。
*インタビューは8月31日にオンラインで実施しました。
(佐古田麻優、Rocky Swift 編集:久保信博)
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