- 2023/09/01 掲載
アングル:TOPIX高値、バリュー株志向反映 東証改革や日銀修正にらむ
[東京 1日 ロイター] - 東証株価指数(TOPIX)と日経平均株価の値動きに「格差」が生じている。出遅れていたTOPIXがバブル後高値を更新した一方、日経平均は6月につけた同高値まで1000円近く距離を残す。背景には、根強い東証改革への期待感や日銀の政策修正への思惑があり、目先はバリュー株志向の相場を反映しやすいTOPIXが優位を保つ流れが続くとの見方が出ている。
TOPIXが日経平均に対し優勢になってきたタイミングは「海外の短期投資家による買いが一巡した後だ」と、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは指摘する。
日経平均とTOPIXの比率である「NT倍率」をみるとわかりやすい。日経平均の上昇の強さを反映して、年前半は上昇基調にあった。年初は13.6倍程度だったが、海外勢による買いが相場を押し上げた6月には14.6倍にまで高まった。日経平均はTOPIXに比べ海外勢の間での知名度が高く、現物も先物も手掛けられやすいと市場では見られている。
そのNT倍率は、足元で13.9倍台に低下している。背景として「7月以降は国内外の中長期の投資家が入ってきている可能性がある」と井出氏は、投資家層が変化してきているとみている。中長期の投資家は、TOPIXをベンチマークに採用しているケースが多い。
日経平均は、東京エレクトロンやアドバンテスト、ファーストリテイリング、ソフトバンクグループといったグロース株の寄与が大きい。一方、TOPIXは、トヨタ自動車や三菱UFJフィナンシャル・グループなどの寄与が大きく、大型バリューの性質がある。
<下期の先導役は自動車と銀行か>
金利上昇局面ではグロース株よりバリュー株が選好されやすい面があり「米国での利下げが明確に見通せるようになるまで、バリュー優位は続くのではないか」と、三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは指摘する。
東証改革への期待が根強いことも、バリュー優位を支える要因になりえるという。東証が上場企業に対し、株価や資本コストを意識した経営を要請したことで、PBR(株価純資産倍率)の相対的に低いバリュー株の株主還元への思惑が、今年前半の海外勢の買いを促した。一方、7月までに東証の要請への対応を開示したり検討中と表明した企業はプライム市場の3割にとどまっており「今後も開示が続く余地がある」(市川氏)とみられている。
業種別動向でも、銀行や自動車といったバリュー株の一角が相場の先導役として有力との声がある。
「下半期に上げやすい業種の一つは銀行だ」と、松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは指摘する。日本の基調的なインフレが意識される中、市場では早期のマイナス金利解除への思惑がくすぶっている。マイナス金利は利ざやの縮小を通じて銀行業績にネガティブな影響を与えてきたが「債券市場が復活して金利が正常化に向かうとの思惑から、銀行株は上値余地がある」(窪田氏)という。
「トヨタは為替差益だけでなく、生産・販売の回復が目覚ましい。中間決算での業績見通しの上方修正が確実視される」(ニッセイ基礎研の井出氏)として、自動車株への関心も高い。半導体不足による生産調整からの回復が市場で意識されている。トヨタ自動車が8月30日に発表した7月の世界販売と世界生産(いずれもトヨタ車とレクサス車のみ)は、同月として過去最高だった。
もっとも、東証の要請に関しては「企業経営者が先行きへの警戒感から取り組みに二の足を踏んでいる様子や、体制整備に時間を要する可能性もうかがえる」と、三井住友DSAMの市川氏は指摘する。
日本IR協議会が5─6月に実施したアンケートでは、東証の要請に対応する課題として「外部要因による計画未達成のリスク」との認識が50%と大きく占めた。「取組みを実?するためのリソースや体制が整っていない」との指摘は33%あった。
「改革のモメンタムが持続するかは、注視する必要がある」(市川氏)ともみられている。
(平田紀之 編集:橋本浩)
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