- 2023/09/01 掲載
アングル:中国のIPO抑制で企業の調達計画に暗雲、景気の重しに
先週末に政府は、低迷する株式市場を活性化させ、成長の勢いを急速に失いつつある中国経済への投資家の信認を高めようと一連の対応策を発表しており、IPOの抑制はその一環。
地政学的緊張と規制強化を背景に、IPOを計画していた国内企業は上場先として海外市場よりも国内市場を選ぶようになった。そのため中国本土でのIPOは今年、中国の金融セクターでは数少ない好調な分野となっていた。
米調査会社ディールロジックのデータによると、年初来のIPO総額は397億ドル相当で、前年同期の682億ドルから減ったが、米市場でのIPO総額(131億ドル)の2倍以上だった。
IPO抑制策の導入は、不動産セクターの債務危機深刻化の影響で国内民間企業にとって債券市場が利用しづらく、高コストになっているタイミングだった。プライベートエクイティ(PE)会社による中国への投資意欲の減退も重なって、企業は成長資金を手に入れる手立てが減り、目先の事業計画が圧迫されると市場関係者は指摘する。
オリエント・キャピタル・リサーチのマネジングディレクター、アンドリュー・コリアー氏は、「IPOのペース鈍化は株式市場にはほとんど影響しないが、景気のてこ入れが切実な課題となっているこの時期に民間セクターの資本アクセスをさらに狭めるだろう」と危惧を示した。
中国証券監督管理委員会(証監会)は27日、投資と資金調達の「動的平衡」を促すため、IPOの段階的な制限に乗り出すと発表した。規制の期間は明言しておらず、銀行関係者はIPOの審査が厳しくなり、登録手続きも長期化すると見込んでいる。
<管理されたIPO>
取引所のデータによると、上海と深センの取引所ではロボット開発の上海節?機器人科技(JAKA)など650社以上が上場待ちとなっている。
銀行関係者は、IPOのペースを鈍らせる今回の政策は、政府の介入を排除し、米国式の登録ベースのIPO制度を導入しようとした今年初めのIPO改革に逆行すると指摘。「株価を押し上げるためにIPOを管理するという、古い近視眼的なモデルに戻ろうとしている」と苦言を呈した。「中国の登録制IPOシステムが本物ではないことも示された」という。
既に今回の決定前から、銀行関係者や法律専門家は企業の資金調達計画やリファイナンス計画について証券取引所から通常より厳しい問い合わせを受けていた。
この銀行関係者は「IPOを予定していた多くの企業が計画を断念すると思う」と話した。
中国がオフショアIPOを目指す企業への監視を強化し、香港が流動性の不足に苦しみ、米中間の緊張で米市場上場への希望がしぼむ中、今回の措置によって中国企業は株式による資金調達の選択肢をほとんど失ってしまう。
中国の金融システムに関する著作を持つフレーザー・ハウイー氏は、「こうした微調整は株式市場の低迷といった症状には対処できるが、経済という問題の解決には何の役にも立たない」と厳しい見方を示した。
(Samuel Shen記者、Kane Wu記者)
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