- 2023/05/25 掲載
グリーンピースが自動車大手の報告書、鋼材のCO2排出量開示不十分
[東京 25日 ロイター] - 環境保護団体グリーンピースが、車両に使う鋼材の二酸化炭素(CO2)排出量に関する大手自動車メーカーの開示が不十分だとする報告書をまとめた。25日に公表する。自動車のライフサイクルに占めるCO2排出量は、電動化に伴い走行中は減りつつある一方、原材料に由来する割合が増えている。車両を小型化することで、CO2を多く出す鋼材の消費量を減らすべきだと指摘している。
ロイターが事前に入手した報告書によると、世界の自動車大手16社が2021年に使用した鋼材は4000万─6700万トンで、少なくとも7700万トンのCO2を排出したと推定している。グリーンピースは、自動車メーカーがCO2排出実質ゼロを約束したにもかかわらず、鋼材を脱炭素化するための「具体的な行動」を怠っていると指摘。使用する鋼材のカーボンフットプリントを表示していないとしている。
グリーンピースは、自動車メーカーの鉄鋼消費量を算出するに当たり、自動車調査会社マークラインズの販売データを基に試算したという。このデータには異なるモデルや車両の想定重量などの情報が含まれる。グリーンピースは、製鉄の炭素排出強度に関する世界鉄鋼協会の履歴データも使用した。
グリーンピースは2022年と2021年のメーカー別の鋼材消費量について、販売シェアの高かったトヨタ自動車、独フォルクスワーゲン(VW)、韓国・現代自動車グループが最も多かったとしている。
グリーンピース・東アジアのシニアアナリスト、Wenjie Liu氏は「自動車メーカーが鋼材の脱炭素化をしておらず、私たちを気候変動による破滅に向かわせようとしている」と指摘。「本気で脱炭素を目指すのであれば、自動車メーカーは30年までに鋼材のCO2排出量を半減させなければならない」とし、「長期的に鋼材の使用量を減らし、炭素ゼロの製鉄へ完全に移行する必要がある」と主張している。
報告書の内容についてトヨタ広報にコメントを求めたところ、原料・部品の製造、車両の生産・輸送・走行・廃棄なども含めたライフサイクル全体で目標を設定して取り組んでおり、鋼材製造時のCO2排出削減も「この目標の対象」と説明。鉄鋼メーカーを含む全ての仕入先と「さまざまな具体的な取り組みを進めている」と回答した。鉄鋼メーカーとは水素還元鉄、電炉材等による低炭素鋼など、さまざまな低CO2鋼材の技術開発、活用などを議論・模索していると述べた。
VWの広報は「温室効果ガス(GHG)プロトコルに従い、GHG排出量を開示している」とし、「GHG排出量には鋼材の上流・使用段階の下流の排出量が含まれている」と説明。「LCAデータベースに基づいて鋼材関連のCO2排出量を評価している」と述べ、グリーンピースの計算結果の妥当性については「計算の前提が不明でフィードバックできない」とした。
現代自の広報は「当社の基準に沿って効率的な排出削減方法を順守し、排出削減目標を設定するために鉄鋼の仕入先と緊密に協力している」とコメント。「今後も多様な施策やパートナーとの協力を通じてカーボンニュートラルに向けた全体的な取り組みを続けるとした。
*見出しを明確化して再送します。
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