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  • 2021/01/26 掲載

非対面前提の「マーケティングDX」には何が必要? 顧客体験を“再構築”する方法

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コロナ禍におけるテレワーク対応が一段落し、企業のIT投資はデジタル変革(DX)推進に新たな舵を切っている。マーケティング領域では、非対面を前提とした顧客体験(CX)の構築が重要な課題となるが、マーケティングDX実現に向け、企業はいかにして顧客エンゲージメントを深めていけばよいのだろうか。アイ・ティ・アール(ITR) シニア・アナリストの水野慎也氏にIT投資の最新動向や“マーケティングにおけるDX”について聞いた。
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アイ・ティ・アール(ITR)
シニア・アナリスト
水野慎也氏

カゴメにて情報システム部門に20年以上在籍し、生産・調達・物流を中心にエンタープライズアプリケーションの企画・開発・導入を担当。SCMパッケージの導入推進など各種プロジェクトを担当するとともに、組織運営・IT戦略立案などに携わる。また、広告宣伝部門にてデジタルマーケティングを推進。2020年4月より現職。


IT投資はコロナ禍でもプラス基調に

 コロナ禍において、企業はテレワーク対応をはじめとするIT環境整備を余儀なくされた。ITRが2020年8月から9月にかけて実施した「IT投資動向調査 2021」によれば、企業の投資意欲を指標化した「IT投資インデックス」の2020年の実績値は1.93だった。

 「1を超えればプラス基調といわれるため、コロナ禍による不況にもかかわらず、企業のIT投資は依然として追い風にある」と水野氏は話す。

 また、IT投資の領域については、テレワーク対応が一段落し、DX推進に新たな舵を切っている。水野氏は「今後は社内文書や契約書などの電子化や、営業活動のオンライン化、販売チャネルのオンライン化などが注目されるだろう」と説明した。

 DXを推進する部門の設置状況を見ると、専任部署や部門横断プロジェクトなど何らかのDX組織が設置されている企業の割合は2020年には67%にのぼるなど、DXへの取り組みは加速している。

 さらに、マーケティング領域でのDXについては、水野氏は、「統合型マーケティング(MA)やDMP、CXプラットフォームやチャットボットなどのデジタルテクノロジーの活用がさらに進むと見られ、これらの市場は今後、高い成長率が見込まれる」と述べた。これらのテクノロジーをどのように生かせば、「マーケティングDX」を実現できるのだろうか。

顧客の課題に応じたアプローチが重要

 マーケティングDXのカギを握るのが「顧客エンゲージメントの深化」だ。博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所の「メディア定点調査2020」によれば、「インターネットの情報は、うのみにできない」と回答した生活者の割合は84.1%にのぼり、メディアの信憑性や確からしさに懸念を持つ生活者の傾向が見られる。

 しかし、情報があふれる中では「情報を選択できない」状況が生まれるのも確かだ。そこで、水野氏は「顧客の課題に応じたアプローチが重要だ」と述べる。

 商品選びのプロセスに「こだわるか」「直感的か」を縦軸に、「面倒か」「楽しいか」を横軸に置いた4象限で、顧客絵のアプローチを分類したのが下図だ。

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顧客の課題とアプローチの使い分け

 これによると、1の象限にあたる家電や旅行などの「こだわりが強く、面倒」な購買プロセスを経る商材は、「比較のための情報が氾濫しているため、的確におすすめするコンテンツやアプローチが必要だ」という。

 また、2の象限にあたる医薬品や機能性表示食品といった「機能に差別性がない」商材は、信頼できる根拠を提示することが重要だ。

 そして、3の象限にあたる、住宅や自動車、ファッションなどの「選ぶプロセスが楽しい」商材はしっかり選べる演出を重視することが、4の象限の清涼飲料やアルコールなど「店頭などで直感的に選択する」商材はイメージや接点を多様化していくことが価値創出に必要だと水野氏は話した。

 また、「顧客の困りごと」の発生タイミングを捉えることも、顧客エンゲージメントの深化には重要なポイントとなる。

 たとえば、医薬品であれば、症状が顕在化した後であれば病院に診察を受けに行ってしまう。「医薬品ブランドは顧客の潜在的不安などの課題に適切にアプローチすること」が求められるのだ。

 また、住宅であれば、購入のタイミングで顧客課題が強まるのは当然で、それ以前の「家が欲しい」という漠然としたニーズのタイミングをいかに捉えるか、さらに、住宅という商材の長いサイクルを購入し、購入後のリフォームや売却、相続など、顧客のライフサイクルに沿ったカスタマージャーニーを想定しておく必要がある。

 こうした顧客ニーズの捕捉にデジタルテクノロジーを活用し、「顧客エンゲージメントの深化」を目指すことも近年のトレンドとなりつつある。

 WebサイトやSNSなどのオンラインチャネルと店頭やイベント会場などのオフラインチャネルの両面で、さまざまなコンテンツを駆使してアプローチするD2C(Direct to Consumer)が注目されている。

 これを支えるのが、顧客の行動データを分析し適切なアクションを行うための、IoTデバイスやセンサーカメラ、VR(仮想現実) / AR(拡張現実)、AIチャットボットなどのテクノロジーを活用した顧客接点の整備だ。

 水野氏は、デジタル活用による良質なコンテンツを顧客が最も心地よいチャネルで体験できるように構築することが「顧客エンゲージメントの深化」の上で重要だと提言した。

【次ページ】長期の信頼関係で「離脱しないマーケティング」へ
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