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スマホの台頭やデータトラフィックの急増、インターネット企業による市場参入など、目まぐるしく変化する携帯電話業界において、大手携帯キャリア3社はどのような戦略を用意しているのだろうか。慶應義塾大学 環境情報学部教授、中村修氏がモデレータに立ち、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社の担当者によるパネルディスカッションが行われ、日本やグローバル市場での取り組み、トラフィック急増問題、モバイルの未来像などについて、3社3様の戦略を明かした。
大手キャリア3社が示す現状対策と未来の展望
現在、日本の携帯電話業界は大きな転換期にさしかかっている。スマートフォンをはじめとするモバイルデバイスの多様化と急増、グーグルやアップルなどのインターネット業界の市場参入、海外ベンダーの台頭など、複雑に絡み合う課題の嵐に携帯キャリア各社は変革を迫られている。
「Interop Tokyo 2012」の基調講演「日本のケータイはどこにむかうのか ~3大携帯キャリアに聞く、課題と挑戦~」では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルを代表するパネリストが登場し、現状と今後について熱く語った。
講演の冒頭で、モデレータの慶應義塾大学 環境情報学部教授、中村修氏は、ディスカッションのテーマを3つ設定した。1つは、現況の具体的な取り組みについて。2つめは、携帯通信網の変化に対する対策について。3つめは、今後の展望だ。
携帯電話の形にとらわれない進化~ソフトバンクモバイル
「弊社の目標は、アジアNo.1のインターネットカンパニーになることだ」。最初に口火を切ったソフトバンクモバイルの近藤正充氏は、同社の中核戦略をこう示した。インターネット会社をグループに持つ同社は、こうしたインターネットビジネスと連携し、iPhoneを先駆けて販売した先見性や「データARPU比率が世界No.1」(近藤氏)であるなどの強みを活かし、インターネットドリブンの戦略でさらなる事業拡充を狙う。
海外についても同様だ。同社は、中国最大の実名制SNS「renren(人人網)」や中国No.1のオンラインテレビ「PPLive」などのインターネットプレーヤーと提携した。さらに2011年10月、インドの通信事業者Bharti Airtel(バーティエアテル)と提携し、シンガポールに合弁会社Bharti Softbank Holdings(バーティ ソフトバンク ホールディングス)を設立した。インドは携帯契約者数が9億人で、中国に次ぐ第2位の規模に成長している。「具体的な内容はこれからだが、インドのモバイルインターネットは発展途上なので、日本の携帯電話やサービス、コンテンツを持って行き、市場開拓できるのではないかと考えている」(近藤氏)。
そんな同社だけに、ネットワークの逼迫問題は深刻な課題だ。「まずは電波状況の改善として、基地局数をボーダフォン買収後の10倍(19万)にまで増やした。また、Wi-Fiスポットのアクセスポイント数も25万局まで増強した」(近藤氏)。直近では、3GからWi-Fiへのシームレスなアクセスを視野に入れたインフラ整備を実施しており、2012年7月25日からは900MHz帯サービス「プラチナバンド」を開始、よりつながりやすい環境を整える。
もう1つの対策は、通信回線の高速化だ。次世代通信規格TD-LTE/AXGP対応の通信サービス「Softbank 4G」は、下り最大110Mbpsを実現。「つながりづらいという声に応えるべく、新しいインフラの早期展開を目指し、今年3月に始めた4Gは今年度末までに政令指定都市を100%カバーする予定」と近藤氏は断言した。
今後について、近藤氏は携帯電話の形にこだわらない取り組みを展開するとし、例に通信機能付きデジタルフォトフレーム「フォトビジョン」、異常を検知して携帯電話などに通知する「みまもりホームセキュリティ」などを挙げた。また、ホンダ「インターナビ」へのM2Mモジュール搭載や、放射線センサー搭載スマホなど、他社との協業で新しいモバイルの姿を提案する。
「従来の形状に固執すると、ビジネスの幅は広がらない」(近藤氏)。既成概念にとらわれない発想で、独自の道を突き進む。
【次ページ】3M戦略からM2Mへ進路をとる~KDDI
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