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  • 2012/05/24 掲載

米ガートナー ニック・ジョーンズ氏:モバイル活用でイノベーションを起こす7つの戦術

企業のモバイル戦略を成功に導く

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ガートナー・リサーチによれば、モバイル活用はほとんどの国の企業で第2位に位置づけられる重要項目だ。これからの10年、クラウドなどの他のトレンドとの相乗効果によって、スマートデバイスはますます企業で利用されるという。しかし、モバイル活用といっても、その対象範囲は広く、テクノロジーの進歩も早いため、活用戦略にも定期的な点検が必要になる。ガートナー リサーチ バイスプレジデント 兼 最上級アナリスト ニック・ジョーンズ氏は、世界各国の活用事例も交えつつ、企業のモバイル戦略を成功に導くヒントについて解説した。

マルチチャンネルを対象とする第二世代のモバイル戦略

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ガートナー リサーチ
バイスプレジデント
兼 最上級アナリスト
ニック・ジョーンズ氏
 「現在のモバイル戦略は第一世代であり、すでに陳腐化している。そのため、第二世代の戦略を立案しなければならない」、ガートナー主催のITインフラストラクチャ&データセンター サミットで米ガートナー リサーチのニック・ジョーンズ氏はこう指摘する。

 いまモバイルの世界には、大きな変化が訪れている。たとえば、SNSを利用した行動分析、LTEによる高速通信、低コストなスマートフォンの登場などがそれに該当する。こうした変化に企業が対応するには、最新のモバイル戦略を立案し、体制を整えておかなければならない。

 ではモバイル戦略では、具体的にどのような要素を考慮すればよいのだろうか。ジョーンズ氏は、まず戦略を立案するうえで、ターゲットを定義したうえで、「デマンド(需要)側」「サプライ(供給)側」「ガバナンス」「リスク管理」の4つの領域について明確にしておくべきだと説く。「必要なものは何か?」「どのように提供するか?」「社内コントロールをどうするか?」「重要な戦略的リスクはあるか?」という点をそれぞれ吟味するのである。

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モバイル戦略で検討するべき4つの領域
(出典:ガートナー,2012)

 かつてのモバイル戦略は、範囲も狭義で、その対象はモバイル分野のみに限定されていた。Web機能の一部をモバイルに展開し、多機能電話と一部のスマートフォンへの対応を考え、短期的な調達と開発を目指していた。

 ところが第二世代のモバイル戦略では、より対象範囲が広くなっている。モバイル分野のほかに、タブレットやスマートテレビなど端末も多くなった。またモバイルアプリケーションの提供方法も変化している。

 このような点を踏まえて新戦略を練ることになるが、戦略は1つとは限らないとジョーンズ氏は話す。

「少なくとも社内向けのB2E分野と、社外向けのB2C分野に向けた両戦略を考えておく必要がある。B2C分野は半年ごとに更新されるような比較的短期間の戦略だ。一方、B2E分野は少し長いスパンでの戦略となる。ただし、これらは目的が異なっていても、長期的な展望では開発・提供するツールが共通化していくため、テクノロジーは収束に向かっていく。」(ジョーンズ氏)

イノベーションを促すデマンド側の7つの戦術

 では、まず「デマンド側」の戦略をみていこう。ジョーンズ氏によれば、この戦略が最も難しいという。B2C分野では、まず市場と顧客を理解することが大切だ。たとえば国内事情を調べてみると、他国よりも日本は特に複雑な状況であることが分かる。

 というのも、スマートフォンのプラットフォーム(OS)には、Android、iOS、Linux、Symbianが使われ、携帯電話のベンダーもシャープ、アップル、富士通、ソニーエリクソン、パナソニック、京セラ、東芝、NECなど少なくとも8社以上が林立しているからだ。

 その結果、日本ではアプリケーションの開発に多様性がありすぎて、開発ベンダーにかなりの負担が掛かっている。

 それでも積極的に活用する企業は少なくない。たとえばB2E分野では、社内の従業員に対するモバイルアプリケーションの配信方法が変わってきた。デバイスに依存しないアプリケーションを開発し、企業向けアプリ・ストアなどで配信するというものだ。従業員が複数のデバイスを所有するようになり、彼らが持ち込んだデバイス「BYOD」(Bring Your Own Device:私有物の持ち込み)を企業側もサポートしようとしている。

 B2C分野でもイノベーションが登場している。その例としてジョーンズ氏が挙げるのがパワフルな認識技術だ。モバイルを利用し、画像や音でモノを認識する。

 たとえば、「Snooth」は、携帯電話のカメラで商品ラベルを撮影すれば、その商品に関わる情報が取得できるというものだ。たとえば、ワインのラベルを撮影することで、そのワインの評判や価格まで明らかになる。

 米ヤフー傘下の「IntoNow」は、TVの音声を聞き分け、何の番組を視ているのか判断し、それをソーシャルテレビとして機能させるサービスだ。iPhoneのカメラでテレビ番組を撮影すれば、何の番組かを認識し、その番組に関するツイートができたり、内容に沿った広告などを表示したりする。

 NFC(近距離無線通信)を用いた支払いやクーポンなどはもちろん、Corventis社が提供するNUVANTという製品では、装着者の健康状態をワイヤレスで提供している。

 さらにユニークなものとして、米大手小売のテスコ傘下、韓国のHomePlusが行った事例がある。地下鉄などの壁にQRコード付きの商品の写真を貼り、携帯電話で欲しい商品を認識させ、そのままスーパーから商品を自宅に配達するというものだ。これにより、従来の店舗を拡大することなく、大幅に顧客接点を増やすことに成功した(YouTube上に掲載されている動画)。

【次ページ】モバイル活用でイノベーションを起こす7つの戦術
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