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  • 2009/12/25 掲載

「デジマーケティングはメディアの変化ではなく人々の変化に追いつくためのもの」――ケント・ワータイム氏

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先日発売されたばかりの『次世代メディアマーケティング』(“DigiMarketing”日本語版)の著者であり、オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンの代表取締役社長を務めるケント・ワータイム氏を訪ね、マーケティングの世界で起こっている変化について話をうかがった。「デジタルマーケティング」の必要性を訴えるワータイム氏に、現在のマーケティングの在り方や日本市場のポテンシャルはどう見えているのだろうか。

消費者は半分以上の時間をオンラインで過ごすが
広告投資は追いついていない



オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン
代表取締役社長
ケント・ワータイム氏


――現在、マーケティングシーンにはどのような変化が起こっているのでしょうか? 『次世代メディアマーケティング』(原題は“DigiMarketing”)を執筆された背景とともに、まずお聞かせください。

 まずみなさんにお伝えしたかったのは、デジタルマーケティングとはテクニカルで複雑な話ではなく、とてもシンプルな変化なんだということです。一部のティーンエイジャーやオタクの世界のできごとではなく世界中の、人類全体が起こしている変化です。たとえば日本では1億人が携帯電話でネットにつながっています。中国には4億人程度の携帯電話ユーザーがいて、インドでは毎月600万人ずつ携帯電話ユーザーが増え続けています。その中で若い世代はテレビよりデジタルメディアに多くの時間を割くようになっています。

 一方で、広告主の多くはこうしたドラマチックな変化についていっていません。一般の消費者は半分以上の時間をオンラインで過ごすというのに、マーケターは広告費用の半分もデジタルメディアに割いていません。ある調査によれば、オンラインメディアに広告費用を投じている企業は、全体の約60%だそうです。私はこれを、「積極的な企業が60%もある」と楽観的に見てはいません。むしろ「オンラインメディアに広告費用を投じていない企業が40%もある」と見ています。消費者が半分以上の時間を過ごす最大のチャネルに対して、投資していない企業が40%もあるということですから。ですから私はこの本で、「なぜ広告主たちは、一般の人たちが集まる場所に広告費用を投じないのか?」と問いかけたかったのです。

――その答えは、この本を読めばわかるのでしょうか?

 残念ながら、この問いに対する簡単な答えはありません。ただ、ひとつの可能性として考えられるのは、広告主が今の世界を複雑に感じていて、どう対処すればよいのかわからなくなっているのではないでしょうか。複雑に感じている理由は、新しいメディアや技術に関する知識が少ないせいではありません。新しいメディアの効果を信じられず、自信を持って予算を投じられずにいるのだと思います。その決断を後押しすることが、私の役割です。


マーケターの意識とは無関係に
変化はすでに起こっている

――では、マーケターが自信を持てないのはなぜでしょうか?

 メディアだけではなく、世界の変化にマーケターが追いついていないからでしょう。消費者はとっくにマーケターを追い越しています。クリックしてWebを見るだけではなく、参加もしています。投票し、タグをつけ、ブログを書き、ビデオを共有しているのです。マーケターはこうした世界の変化をまず受け入れることが必要です。変化はすでに起こってしまっているのです。

――最も大きな変化は何だとお考えですか?

 企業のセールスマンが商品を売り込む時代は終わったということでしょう。消費者自身がセールスマンになり、決断する。その決断を手伝うのが、これからのマーケターの役割になるでしょう。そのためには、コンテンツづくりにおいても消費者視点での行動が求められます。複雑なものはすぐに飽きられるので、コンテンツも提供方法もシンプルであるべきです。

――デジタルメディアにコンテンツを提供すると、消費者が好きなように編集してしまうということに危惧を抱いているマーケターもいると思うのですが?

 すべてをマーケターがコントロールできたのは過去の話です。これからは、コンテンツは消費者が編集するものだという前提でコンテンツを提供すべきでしょう。もし仮に編集させたくないと言っても、消費者は勝手に編集します。そのために必要なブランドロゴ画像などは、すでにオンラインにあふれています。

 勝手にコンテンツを編集する消費者への見方自体を変えていく必要があると思っています。「無責任に編集する消費者」として捉えるのではなく、「ブランドが好きで機会を作っては参加してくれる消費者」として捉えてはどうでしょうか。うまくエンゲージできれば情報提供先として、イベントへの参加者として積極的に活動してもらえる可能性さえあります。消費者がどう考えているのかをよく見て、エンゲージする機会を上手に使って、消費者に手助けしてもらうつもりで接するとよいのではないでしょうか。

――消費者とのエンゲージを重視するデジタルメディアでのマーケティングでは、1 to 1やパーソナライズが重要だと常々語っていらっしゃいます。そうした視点でコンテンツを作るためのヒントはありますか?

 パーソナライズされたクリエイティブとは、できあがったものを提供するだけではなく、消費者がインタラクティブに参加する部分がなくてはなりません。消費者がそのコンテンツを使って何をするかを考えて作る必要があります。とはいえ、クリエイティブの根幹は変わりません。やはりアイディアが最も重要で、面白いものが消費者の興味を引きます。技術的に優れていても、興味を持ってもらえないものはうまくいきません。

 何度も使ってもらい、友達にも紹介してもらえれば成功です。そうなるために、コンテンツを作る段階で自分に問う必要があります。「もし自分が消費者だったら、これを10回使いたいだろうか?」と。面白くて便利で魅力的であれば、繰り返し使ってもらうことができ、その分だけ消費者とのエンゲージの機会が増えます。

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