• 2008/10/23 掲載

【最新ITトレンドが与えるインパクトとは 2 】コラボレーティブアプリケーションは、情報の共有から活用へ

IDC Japan ソフトウェアリサーチアナリスト 入谷光浩氏

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企業がイノベーション創出による価値向上を目指す上で、欠かせなくなったIT戦略。今では、その成否が企業の命運を握るといっても過言ではありません。そのような中、経営者・CIOは、ITトレンドを把握し、それを自社に取り入れるべきか、Yesの場合、どういう仕組みを構築すべきか、どういった効果が出るのかを正確に理解する必要が出てきています。本連載では、今後のITトレンドを数字で紹介するととも に、経営者・CIOに対して、そのITトレンドを導入すべきかどうかの判断材料について解説していきます。



企業内コラボレーションの変化


仮想化
IDC Japan
ソフトウェア リサーチアナリスト
入谷光浩氏
 企業内のコラボレーションを実現するツールとして、真っ先にグループウェアを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。グループウェアは大企業から中堅中小企業まで多くの企業に導入されており、成熟された製品と言える。グループウェアの主な機能としては、メールやカレンダー、スケジュール管理、文書共有などが挙げられる。これらはどちらかというと、情報を共有するためのコラボレーション機能である。

 しかし、現在では企業内に多くの情報が溢れかえっており、これらをどのように活用していくかということが求められるようになってきた。つまり、情報をナレッジ(知識)化して共有・蓄積することが重要となる。また、コラボレーションするために必要なコミュニケーション手段も多様化が進んでいる。今までのような電話やメールを中心としたコミュニケーションから、ユニファイドコミュニケーションやWeb2.0テクノロジーを活用したコミュニケーションへと進化している。

 このような状況の中でグループウェアも多機能・高機能化が進んでいる。また、グループウェア以外にも、コラボレーションを実現するアプリケーションが次々に登場している。

コラボレーティブアプリケーション市場の動向

 IDCではコラボレーティブアプリケーションを、機能別に6つのカテゴリに分類している(図1)。それぞれの市場について2005年から2007年までの市場規模を算出している(図2)。


※クリックで拡大
図1 国内コラボレーティブアプリケーション市場定義
   Source:IDC Japan,July 2008


 「統合コラボレーティブ環境」は、IBM Lotus Notes/DominoやMicrosoft Exchange Serverなど従来のグループウェア製品が中心となる。2006年、2007年と2桁成長を続けてはいるが、大手/中堅企業へはほとんど導入されていることから市場の成長は更新需要が支えている。
 「メッセージングアプリケーション」は、メールサーバアプリケーションが中心であるが、最近ではメールボックスに音声やFAXを送ることができるボイスメールやインスタントメッセンジャーなど、ユニファイドコミュニケーションツールが成長してきている。
 「会議アプリケーション」は市場規模は小さいながらも、Web会議アプリケーションを中心に市場が立ち上がってきている。テレビ会議システムに比べて導入が安価で簡単に済み、社内間出張費の削減効果としても期待されている。

 コラボレーティブアプリケーション市場の中で最も高い成長を達成しているのは、「エンタープライズポータル」である。Microsoft Office SharePoint Serverやドリーム・アーツのINSUITE、リアルコムのKnowledgeMarketなどがこの市場をけん引している。これらの製品は企業内のさまざまな情報を共有し、それらを従業員間でコラボレーションしながらナレッジに変換し、業務の中での意思決定に利用するという点で共通している。すでにユーザー企業において、こうしたアプリケーションを利用した情報活用が始まっている。


※クリックで拡大
図2 国内コラボレーティブアプリケーションの市場規模
   Source:IDC Japan,July 2008


コラボレーティブアプリケーションの方向性

 コラボレーティブアプリケーションの中心にあるグループウェアは、情報の活用性を高めるため高機能・多機能化が進んでいくと考えられる。また、Ajaxなどを実装することにより操作性の複雑性を低くし、従業員が多くの機能を有効に活用できるようになってきている。エンタープライズポータルは活用する情報の範囲を広げ、ERPやCRM、BIと連携することで、企業経営の意思決定を支援できるようになっていくだろう。

 コンシューマーで利用されてきた技術を、企業内に取り込んでビジネス用途として使っていくという点にも注目していきたい。インスタントメッセージングは、ちょっとした相談などを行う際には便利である。最近ではExcelやPowerPointを共有しながら、メッセージの交換を行うことができるようにもなってきている。ビジネスのコミュニケーション手段が、電話・FAXからメールに移り変わってきたように、メールからインスタントメッセージングへのシフトが徐々に行われていくのではないだろうか。また、Web2.0を象徴するSNSやブログもグループウェアやエンタープライズポータルに実装され、双方向なコミュニケーションによる情報活用の支援するテクノロジーとして大きな影響を与えていくだろう。


※クリックで拡大
図3 コラボレーティブアプリケーションの方向性
   Source:IDC Japan,July 2008


 IDCでは国内コラボレーティブアプリケーション市場について、2008年~2012年までの市場予測を算出している(図4)。コラボレーティブアプリケーション市場全体では、2007年の584億円から2012年には870億円になり、5年間のCAGR(年平均成長率)が8.3%と予測している。エンタープライズポータルを中心に、より情報の活用を主眼に置いた製品が成長していくと考えられる。また、ビジネススピードがますます速くなっていく中で、コミュニケーションを迅速化し意思決定を早めるということが企業の競争力向上になっていくことは間違いない。現状での市場規模は小さいながらも、今後ユニファイドメッセージングやWeb会議アプリケーションの導入も加速していくだろう。


※クリックで拡大
図4 国内コラボレーティブアプリケーション市場予測
   Source:IDC Japan,July 2008


 コラボレーティブアプリケーションは、普段の業務を効率化するための「便利ツール」から、新たなビジネス機会を生み出す「情報活用ツール」へと進化を続け、さまざまな機能が提供されている。しかし、ユーザー企業がそれらの機能をフルに活用できず、結果的にメールやカレンダーのみしか利用されておらず便利ツールのままで終わっているケースが多く見受けられる。自社で導入されているコラボレーティブアプリケーションの機能をもう一度見直し、有効に利用できるかどうかを検討してみると、新しい情報活用が発見できるかもしれない。その中で足りない機能というものが出てきたら、新しいアプリケーションの導入を検討していくことになるだろう。

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