- 2008/07/04 掲載
【インタビュー】 ITサービスプロバイダが生き残るための3+1ヶ条
ユーザー企業の課題、メガトレンド、ITグローバルトレンドを押さえよう
≫【井上潤吾氏基調講演】WebSAM WORKS DAY 2008
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では、ユーザー企業は、ITに関してどのような課題をもっているのでしょうか? ボストン・コンサルティング・グループ(以下、BCG)では、各業界トップ企業のCIOにインタビューを行いました。多くの企業が挙げたのが、ガバナンスの強化です。ITの投資対効果はまだ低く、活用が不十分です。ここには、ITサービスプロバイダとどう連携していくのかというマネジメントの問題も含まれます。さらに、情報システムにおいては、ランニングコストが積み重なっており、いわば「根雪」状態になっています。この根雪の比率を抑え、新規案件への投資比率を上げていきたいというのです。
最近では、連結経営におけるグループマネジメントも課題になってきています。関連会社を含めたコンプライアンスの問題はもちろん、グループ企業とのシナジー効果を強めていきたいという意向をどの経営層ももっています。グループマネジメントを効果的に行うには、経営のリアルタイム化や顧客サービス向上、業務フローのスリム化など、ITが必要不可欠になってきます。
ITに関する課題として、リソース不足を挙げる企業も少なくありません。現在のIT業界では需給バランスが崩れており、需要が供給を上回っています。ユーザー企業が案件を外部に発注しようとしてもリソースが足りない。一方、社内で内製化しようとすると情報システム部門のキャパシティを超えてしまう。どちらにしてもIT化を思うように進められないという現状があります。
ITサービスプロバイダにとって、ユーザー企業が抱えている課題を知るのは、短期的な対策のために欠かせません。その一方、マクロな視点でメガトレンドを把握しておくことも、生き残るためには必須です。メガトレンドというのは、これから5~10年程度のスパンで起こってくる傾向のことを指し、BCGでもグローバルな調査に基づいた「10のメガトレンド」を発表しています。このうち、ITに大きく関わるメガトレンドについていくつか説明しましょう。
まず1つ目は、デコンストラクションです。これは、従来のバリューチェーンが解体され、新しいバリューチェーンが組み直されることを指します。たとえば、アップルは、CDの代わりにネット配信で音楽を届けるというように、バリューチェーンを変えてしまいました。さらに、iPhoneで新しい市場を作り出そうとしています。新しい市場が生まれる時には、1つの企業が垂直統合型でバリューチェーンを展開することが多いのです。ネット通販ビジネスも、マーケティングから製造、販売、アフターケアまで一括して行うモデルですね。それに対し成熟した市場では、これまで1つのコンポーネントを担っていた企業が力を付けて、バリューチェーンが組み直されるということが起こります。ITサービスプロバイダはIT業界の中でどうやって自分の価値を出していくか、またユーザー企業がITでどうやって価値を出せるのかを考えていかなければなりません。
2つ目は、中国とインドです。この2つの国を市場と捉えるのか、競合相手として捉えるのか。両方の側面から、お話しさせていただく予定です。
3つ目は、地球温暖化です。CO2をどう削減していくのかが経済活動の大きな潮流となっていくでしょう。その中で、ITに何ができるか。たとえば、CO2排出権の取引市場が発達してくれば、情報システムへの需要が高まります。CO2排出権の取引は長期間に渡りますから、金銭と権利の授受をどう情報システムで実現するかはこれからの課題になってくるはずです。
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アウトソーシングとオフショアリングは混同されがちですが、まったく軸の異なるキーワードです。オフショアリングは、海外に業務プロセスを委託すること。一方、アウトソーシングと対義語のインソーシングは、社外か社内、あるいは他グループか自グループかという違いです。台湾に自社のコールセンターがあって、そこのシステムを自社で作るなら、オフショアリングだけれどインソーシングということになります。アウトソーシングなら外部の専門家に頼むことで質のいいシステムを短期間で作れるというメリットがありますし、オフショアリングならコストを抑えられます。しかし、アウトソーシングでは業務をしっかり標準化して切り出し、プロセスの状況に目を光らせておく必要があります。また、オフショアリングでは物理的に距離が離れていますから、コミュニケーションが取りにくいという難点があります。
ITアーキテクチャは、建物の設計図だと考えるとわかりやすいでしょう。建て増しを繰り返して迷路のようになっている老舗旅館を思い浮かべてください。こういう旅館は使いづらいから一から建て直そうということになると、お金がかかりますし、老舗の味をなくしてしまうこともありえます。これは、ITの場合も同様です。ITアーキテクチャを見直すことで、今の構造のまま、もっとユーザー企業に満足を与えられるという考え方もあるわけです。セミナーでは、老舗から先進企業まで多くの企業のITアーキテクチャから得た知見をお話しします。
IT活用は、これから一番のトレンドになると私が考えているキーワードです。今、情報システムがまったくない企業はないでしょう。しかし、せっかく高価なシステムに投資しても、その価値を十分に引き出していないユーザー企業が多いのもまた事実です。理由は、ITリテラシが足りないからかもしれないし、システムが使いづらいせいかもしれません。そうしたことを分析できれば、新しくシステムを作り直さなくても、仕事のやり方を変えることで事業価値を向上できる可能性もあります。
ここまで、ユーザー企業の課題、メガトレンド、ITのトレンドについてお話ししてきました。しかし、1社のITサービスプロバイダがこうしたことをすべて踏まえた上で、戦略を立て、実行するのは不可能です。自社の強みと弱みを認識し、適切な相手と提携することが欠かせません。
たとえば、きめ細かい運用サービスをウリにしていたITサービスプロバイダがあったとします。オフショアリングでは多少サービスが落ちるが圧倒的に安いとなったら、顧客はそちらに流れてしまうでしょう。その場合、運用から活用の方にシフトするのがいいかもしれません。その分野でスキルを開発したり提携を行い、新しい人材も獲得していくという手もあるでしょう。また、開発がオフショアリングになった時に、中国語ができるプロジェクトマネージャーを多く抱えているITサービスプロバイダは、強みを発揮できる可能性が高くなります。
このように、トレンドを把握した上で自社の強みを認識できれば、新しいビジネスチャンスをつかめますし、リスクを避けることも可能になるのです。
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時間 | 講演内容 |
13:30 - 14:10 | 基調講演:「最強」のITサービスプロバイダに向けて ボストン コンサルティング グループ パートナー&マネージング・ディレクター 井上潤吾氏 |
14:10 - 14:50 | 企業競争力を高めるシステム運用とは NEC 第一システムソフトウェア事業部 事業部長 森正氏 |
14:50 - 15:00 | 休憩 |
15:00 - 15:40 | 導入実績No.1ETLツール「Waha!Transformer」で 安心・安全なデータ連携基盤を実現 ~WebSAMオフィスとの連携強化効果とは~ ビーコンインフォメーションテクノロジー セールス&マーケティング部 技師 安原琢也氏 |
15:40 - 16:20 | WebSAMオフィスを活用したパッケージシステムの強化 アルタス情報システム 営業部 課長 丸林延行氏 |
16:20 - 17:00 | 優れたビジネス結果にはITは不可欠 HP Softwareの戦略 日本ヒューレット・パッカード HPソフトウェア事業本部 マーケティング部・部長 河口雄一郎氏 |
詳細内容は、下記「申込はコチラ」よりご覧いただけます。
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