- 2008/03/11 掲載
【岩崎大輔氏インタビュー】スポーツビジネスの光と影!? 話題に事欠かないボクシング業界を描き出す!
――ボクシング業界に関心をもたれたきっかけをお教えください。
岩崎氏■私が20歳前後の頃、「平成三羽烏」と呼ばれた辰吉丈一郎、鬼塚勝也、ピューマ渡久地らが活躍していました。彼らに触発され、近所にボクシングジムもあったので、いっちょ通ってみようか、と思ったわけです。練習生というやつですね。ただ、入門した時点で、「プロになりたかったら毎朝10キロ、ロードワークね」と言われ、「プロとかではなく、健康のためにがんばります」と返答しました。
少し記憶があやふやですが、多分これと同じ時期に山際淳司の『逃げろ、ボクサー』(角川文庫)というスポーツノンフィクションに出合いました。その本の内容ははしょりますが、とても内容には刺激を受け、ボクシングを「やる」よりも「描く」ことに関心が移り、いつかライターになりたいと思うようになりましたね。そのときの題材としては、ボクサーを描いてみたいなぁ、と漠然と考えていたわけです。初めて書いた本は小泉純一郎の実態を描くというものでしたが(苦笑)、二冊目の本にして、その目的はひとまず達せました。
『激闘 リングの覇者を目指して』 |
岩崎氏■もともとフライ級は日本人が伝統的に強い階級で、1952年――敗戦から七年後ですね――白井義男が日本人の初世界チャンピオンとなったのもこの階級です。60年代になると「フライ級三羽烏」としてファイティング原田、海老原博幸、青木勝利が活躍し、平成になると体格が向上した結果、バンタム級やスーパーフライ級に辰吉丈一郎、鬼塚勝也、ピューマ渡久地の「平成三羽烏」が台頭してきました。
大きくて運動神経がある人は野球やサッカー、格闘技であれば、最近ではK-1に行ってしまう傾向があります。でも小さいけれど俊敏な人の受け皿は以外と少なく、選択肢が乏しいので、その何割かはボクシングに向かうと思います。最近は業界をあげてキッズボクシングの育成にも着手しているので、亀田家のように小さいときから英才教育を行うところも増えてきています。今後、ラスベガスを主戦場とするすごい日本人選手が出て来るかもしれません。
――マスコミを賑わせ続ける亀田一家についても詳しく書かれていますが、彼らには今後どのような可能性や選択肢が残されているとお考えですか?
岩崎氏■うーーん、今のままだと明るい未来は考えにくいですね。一家揃ってメキシコに移り、セコンドライセンス無期限停止中の亀田史郎氏や1年間のライセンス停止処分を受けている次男・大毅選手もかの地で再デビュー、その渡航費や対座費は某テレビ局がもつとかいう、ウソかホントか定かではない話はすでに流れていますよね。
結果として、このような情報がかなり飛び交い、所属ジムである協栄の金平会長も「信頼関係が亀田家ともてない」と戸惑っている。一方の亀田サイドも、ある週刊誌で金平会長を「狸オヤジ」と呼び、反論をしている。
真相はわかりませんが、どのみち所属ジムと不毛なかたちで揉めるのは得策ではないです。協栄ジムと亀田プロモーションの代表者は意志疎通をして、何らかの決断をすべきでしょうね。このまま不安定な膠着状態にしておくと、犠牲になるのは興毅選手だと思います。
――実際に選手のトレーニングにも同行して体験取材もなさっていますが、その内容はいかがでしたか?
岩崎氏■「すげーっ!!」って、ひたすら驚いていました。ぽかーんと口をあけてびっくりするばかりですよ。この本にも少し書きましたが、とにかく物凄い練習量でした。2キロの坂道をしきりにダッシュしたりとか、挙げればきりがないけど、普通の生活でまずしないようなことですよね。もちろん、私たち一般人より練習しているのは当たり前ですけど、仮にプロでもサッカー選手の練習とか見ていると、そこまで追い込んだ練習をしてないんじゃないかなぁ。そのうちカメハメ波でも打てそうな勢いで練習していますよ。そのハードな内容に圧倒されましたね。
――『激闘』では選手達の活躍や知られざる一面だけでなく、業界の構造についてまでも言及なさっています。特に問題が大きい部分はどのあたりでしょうか?
岩崎氏■クラブ制度です。アメリカ型のマネージャー制度もドン・キングやボブ・アラムの名前を出すまでもなく、知らずに判子をついたら最後、ものすごい搾取にあうこともあります。
でも、一方で日本のクラブ制度も問題があります。現状では、会長の権限ばかりが肥大化し、選手の権利が著しく損ねられてしまう制度となっています。その一例として、この本で内藤大助選手のフィジカルトレーナーである野木丈司さんを取り上げました。野木さんは移籍のトラブルを巡り、10年もリングから遠ざけられてしまった。当時の会長の言い分もあったかもしれませんが、結果から見れば、将来を嘱望された選手も会長の一存で干されてしまう。
野木さんの例だけでなく、有望な選手が会長ともめてリングを離れてしまう例はたくさんあります。このようなことをなくすために業界をあげて考え直してほしい、と思いこの本では触れています。本来はスポーツ新聞ががんがん書いて、将来があるのに追い込まれているような選手について取り上げてくれればいいのですが、現在の彼らの役割は「大手ジムの広報役」です。もちろんすべてではないですが、大手ジムや一部の有力の選手の情報を垂れ流すだけのところはかなり多いです。甲羅を持った爬虫類の一家がどっかの業者と手を結んだとか、どうでもいい情報を垂れ流す暇があったら、ボクシングについても報道すべきことはもっとあるだろうと思います。
――前作が小泉純一郎、そしてこの本では、ボクシングがテーマでした。今後、ご執筆しようと思っているテーマはありますか?
岩崎氏■これから日本を支える世代として迎える諸問題は当然、気になります。私も非正規雇用の人間で、皮膚感覚として格差社会や年金、医療問題、親の老後などは不安視しています。「ねんきん特別便」がいま手元にありますが、さくっと漏れてましたから(苦笑)。
いま、私は35歳なんですが、それこそキムタクも堀江貴文もホームレスもいる多層な世代です。社会に出てすぐに山一証券や拓銀がつぶれ、「絶対はない」と肝に銘じた記憶もあります。『朝日新聞』では「ロストジェネレーション(ロスジェネ)」、『週刊ダイヤモンド』では「悲惨世代」と呼ばれてます。
自殺者もなかなか減らないだろうし、この先も格差はそう簡単に埋まることはないでしょうが、それでも社会をよくしようと思う人たちも少ないながらいて、その人たちの行動に沿ったり、耳を傾けていければなと思います。
(執筆・構成=松山友子)
●岩崎大輔(いわさき・だいすけ)
1973年、静岡県生まれ。
『フライデー』(講談社)記者。
政治やスポーツなど幅広い分野を取材している。
著書に『ダークサイド・オブ・小泉純一郎 「異形の宰相」の蹉跌』(洋泉社)がある。
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