- 2008/01/24 掲載
「工場立地の候補は、ベトナムへ」 進化するベトナムの“いま”を追う
連載『ふじすえ健三のビジネス+IT潮流』
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ハノイとホーチミンに行き、現地のODAプロジェクトを視察するとともに、日本企業の方々や経営コンサルタントの人たちと話をさせていただきました。
そこで感じたことは「今後の工場の海外立地は、中国でなく、ベトナムではないか」ということです。中国は、北京オリンピックを控え、どんどん景気が過熱していますが、誰が見てもこれはバブルです。私の知り合いの企業も中国に進出して、中国で利益を上げていますが、中国だけに工場を立地しており、中国バブルが崩壊するか分らない中で、中国だけに偏重することは大きなカントリーリスクを抱えていると言わざるを得ません。
カントリーリスクの分散の観点からもベトナムなどへの進出を中国バブル崩壊前に行う必要があると考えます。
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ベトナム政府の方々と話をしても、非常に婉曲的な表現が多く、核心をそのまま告げるようなことはありません。現地で仕事をしている日本人に話を聞くと、「会議で集まって議論するわけでもなく、何となく決まっていく」そうです。逆にあまり意見を言いすぎるとマイナスに働くそうです。何となく15年くらい前の日本に似ているなと思いました。
大使から「もともと中国から漢字などの文化を取り入れた国で、現在でも仏教の国であり、文化の基底が日本と似ているのではないか」と言われました。
そして2つ目は、やはりベトナム人は日本人と同じように「勤勉」なようです。旧社会主義国だった北と南とで違いがあるようですが(つまり北が勤勉さが低い)、概してよく働くし、技術を身につけてすぐに会社を辞めて別の会社にいくようなことも少ないと聞きました。
兎に角、街を歩くと活気があります。正直なところ、上海よりホーチミンの方が活気があると感じました。バイクが怒涛のように走り回っています。
街中にはバイクが怒涛のように走っている |
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ちなみに人件費を見てみると、上海あたりよりは何割か安いようです。現地の日本企業の方は、ベトナムでも技能を持った者の人件費は高く、中国と比べ人件費の差はあまり意味がないとおっしゃっていました。
そして3番目の点が大事です。
それは大国意識がなく、かつ、親日的だということです。
私は、昨年まで中国の清華大で3か月に1回講義をしに行っていました。その中で感じるのは、やはり「反日」の感情です。山東省であった人などわざわざ日本軍が爆撃したところまで連れて行ってくれました。歴史問題は、日中両国の相互理解を作るまでは根強くのこると思いますが、それでも経済活動に歴史問題を持ち込まれると困ります。
また、私が大連で日系企業の経営者と話をさせていただくと「どれだけ地方政府が日系企業に嫌がらせをしているか」を聞かせていただきました。このような日系企業に対する差別待遇を放置している日本政府・大使館にも問題がありますが、やはりここにも反日の影を感じます。反日という言い訳を使い、日経企業に不正を行っている例もあるようです。
一方ベトナムは違います。我が国はベトナムに対して年間約1000億円のODAを行っており、これは援助額ナンバー1となっています。
この援助もあるためか、ベトナム政府、そしてベトナムであった人々からはすごく親日的な印象を受けました。大使館の方々もベトナム政府は日本政府の要望をよく聞いてくれるといっています。ここは中国とは大きく違います。
ハノイ空港の近くには、トヨタ、日産などの自動車メーカの工場、そしてキヤノン、松下などの電気メーカの工場が既に立地されていました。
キヤノンの工場など従業員が1万人もいると聞いてびっくりです。実際にそれぞれの工場の方に話が聞けなかったのが残念でしたが、どんどん工場の規模を拡大しているということです。この工場では、プリンタのアセンブリを行っています。
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そして、キヤノン工場のすぐ近くにあったパナソニックの工場。この工場も大規模で、社員を運ぶバスが何台も駐車場に並んでいました。
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こちらはホーチミン(南部の都市:旧サイゴン)の工業団地の入り口。日本企業が100社以上入居しているそうです。
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ロッテリアも進出 |
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労働人口の減少にベトナムの労働力を活用できないか
ベトナムは今でも多子です。私が会ったベトナムの方々は6人兄弟など当たり前という感じでした。統計でもベトナムは今後とも労働人口の増加が見込まれます(2006年時点、人口8200万人)。
私は、ベトナムを訪問して、人口が今後とも増加が見込まれるベトナムの方々、特に高い教育を受けたベトナム人を日本で働けるようにしてはどうかと考えました。そのためには高度な経済連携協定とともに留学生交流の拡大や在留管理制度の改革などを今から行わなければなりません。
蛇足ですが、ベトナムも昔は、中国語(漢字)を使っていました。現地でいくつもベトナム語と日本語の漢字を通じた共通点を教えていただきましたが、一番印象的だったのは、ベトナムの通貨「ドン」でこれは「銅銭(ドンティエン)」からきているとのことです(あと、ベトナムとは「越南」の読みだそうです。言われてみると確かにそうだなという感じです)。漢字文化、そして仏教文化、ベトナム人は非常に近いものを感じます。わが国の経済にベトナムとの連携は大きなプラスになると確信します。
中国の次の一手としてのベトナム、是非企業経営者は検討してみてはいかがでしょうか?私も政治家として、ベトナムとのつながりを作っていきたいと考えています!!
ふじすえ健三氏
最新著書
『知ってる?私たちの平和憲法』(オープンナレッジ)

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