• 2007/10/09 掲載

変わりゆく大学の講義、導入が進むCMSとは

インターレクト代表取締役 オイヴィン ホーン氏インタビュー

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平成生まれの学生が、すでに大学に入学している。少子化の影響で、大学全入時代が目前だと言われる中、各大学は生き残りをかけて改革に取り組んでいる。その一つがITの活用だ。日本ではあまり聞きなれない「コース管理システム(CMS)」を開発しているインターレクトの代表取締役オイヴィン・ホーンさんに大学教育のITの現状と未来について話を聞いた。
大学の通常授業をサポートする基盤システム「CMS」

CMS
インターレクト
代表取締役 オイヴィン ホーン氏
――大学向けのシステムを開発しようと思ったきっかけは?

Horn■
大学のオンラインラーニングに取り組もうと思ったからです。日本の大学を卒業したあと、2000年3月に創業しました。今後、遠隔授業などが盛んになると予想しました。しかし、現状を調べるうち、4年制大学の通常授業をサポートする基盤システムにもっと大きな需要があることを知り、開発を始め今に至っています。

 私達の製品である「.campus」というシステムは「コースマネジメントシステム(以下、CMS)」と呼ばれています。当社の製品は、日本で4-5種類ある主な製品の中の1つです。オープンソース、アメリカのシステム、日本のメーカが作るシステムなどが主な競合製品です。

――CMSについて詳しく教えてください。

Horn■
簡単に言えば、すべての授業のシラバスデータを収納できるオープンウェブサイトです。教員は、Webの基盤があると授業についてさまざまな告知ができるので、毎日の仕事を効率よく行えます。 学生と教員はWEBブラウザで、授業スペースへアクセスして授業に関する情報を閲覧します。教員が自分の授業の資料を配布するときに最も多く使われています。大教室などで、紙資料を持ち込むことなく、事前にスムーズに資料を配れるようになります。

 また、学生からのレポート提出、添削、講評までもオンライン上で完結します。

 この10年間で、大学では、講義について考え方が変わりました。以前は、先生が「学生の頭の中に知識を詰め込む」ことを良しとされてきました。今は、学生が積極的に自分で知識を構築する時代です。私たちは、これをアクティブラーニングと呼んでいます。

 日本の大学は、IT基盤が整っています。しかし、教育の中であまりパソコンが活用されていません。講義は従来のままのところが多い。CMSを導入することにより、アクティブラーニング環境を作り、教育の質を高めることにつながります。

 それから、CMSの利点として透明性の確保があります。シラバスの内容が公開されるので、授業で何をやるのかわかりやすい。また、成績の公開もできるため、学生が提出したレポートの点数を見たりして、期中でも成績を把握することが可能です。

出欠の有無から課題提出まで「CMS」を使用する大学も


CMS
図1 CMSのイメージ
――導入している大学の具体例は。

Horn■
当社の製品は、法政大学など約20大学で採用されています。全学で使っている場合と、学科だけなど規模は様々です。例えば、法政大学の工学部のある授業では、出欠の有無から課題提出に至るまで「.Campus」を通して実施しています。出席表の代わりに機能の一部である「アンケート管理」を利用し、オンライン上でアンケート入力をしてもらう。これにより、アンケート回答を出席表として一覧表示できるため、作業効率がよくなったとの声が上がっています。また、神戸学院大学では、過去の試験問題をダウンロードできるようにしたところ、試験の成績に勉強の成果が現れたといいます。

 この2年でCMSに注目が集まり、採用が始まりました。10年前に、企業がCRM(Customer Relationship Management)を導入したときと似ていますね。全ての大学が、いかにして優秀な大学生を確保するかにしのぎを削っています。このような開かれたシステムがあると、教員と学生のつながりができて、質問がしやすくなり、オープンな空間ができます。学生の学習意欲を高めたり、学びへの期待に学校も応えることができます。CRMが企業で欠かせないものになっているように、今後大学にとってのCMSもますます需要が高まるでしょう。

――教員が個人で持っているホームページより便利ですか。

Horn■
CMSがなかった頃は、学生とコミュニケーションしようとするなら自身のホームページを立ち上げるしかなかった。学生にとって、先生一人ひとりのホームページを把握するのは負担です。もちろん、ホームページを活用してもいいのですが、資料の配布などは、学生が自身の履修データなどに基づいて必要な資料を見つけやすいCMSの方が便利です。大学の授業情報が集中しているところですから。

――モバイルの利活用は、考えていますか。

Horn■
はい、すでに、一部ですが、先生からの「お知らせ」を見たりできます。掲示板に携帯電話から参加することも可能です。

――会社向けに用意されているLMS(Learning Management System)とはどのような違いがありますか?

Horn■
確かに、eラーニング分野では、企業向けにLMSがあります。LMSは学習の基盤になりますが、大学には向いていません。まず授業という概念がない。そのため、成績を公開するシステム、お知らせ、レポート管理がありません。 CMSは、授業やコースという概念があるため専門学校や高校にも非常に向いていると思います。

――CMSの今後の可能性は。

Horn■
専用のIC カードや携帯電話と「.Campus」を連携させて正確な出席管理をする、などを考えています。これから、大学は遠隔教育に力を入れていくと思うので、そちらのソリューションにも力を入れていきたいですね。今後、生き残りをかける大学にとって、オンラインでの授業は収益源となっていくでしょう。会計を勉強したい、修士号を取りたいなど学習意欲の高い社会人の希望に応えるためにも、日本の大学がそれらの講義をオンラインで提供する時代が来ると思っています。

――貴重なお話ありがとうございました。

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