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  • 2007/03/19 掲載

【企業経営で着目したい4つの時代】仕組み革新の時代 / 法政大嶋口教授(2/3)

【ビジネスインパクトvol.10】個別要素の競争、シェア争いからの脱却

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─やはり文化のようなもの、あるいは先生がいわれる「アンビション」が重要な気がします。それが真ん中にないと、そこから出てきたスタイルや個別の方法論だけを真似ても、本当の意味では変われない。万事が万事、そうでなければ本当の強さにはならない。

嶋口●
そう思います。よく観察していけば、新しく成長してきた会社は、すべからく仕組みのユニーク性をベースにお客様の価値をしっかりとらえて、そして優位性を発揮してきたのだということがわかります。


─ビジネスモデルには、「儲ける仕組み」といった印象があり、そこには必ずしもカルチャーは存在しない。印象としては、先生のいわれる「仕組み」とは違うような気がします。

嶋口●
では、私の言う「仕組み革新」の性格を説明しましょう。大きく5つあります。
 仕組み革新を行う上で、第一に必要なのが「事業の革新的な定義」です。たとえば青梅慶友病院(東京都青梅市にある老人専門病院)という病院があります。医療機関においてはかなり革新的な改革を行って高い業績を上げている病院です。彼らの出発点は「病院はサービス業である」という定義でした。医療機関は非営利法人ですが、利益を上げ、企業を安定的に維持し、成長していくことが求められるという意味では、営利企業との違いはない。医療行為も顧客に対するサービスであり、病院もサービスビジネスなのだという画期的な定義です。

 昔と違って、病院は特別なものではない。今や患者に選択権があるのだから、昔のように病院発・病院着の施し的な発想ではもはや成り立たない。だから、病院であってもギブ&テイク、顧客にとって価値のあるものを提供して、対価を得る。そういう形で考えていこうとしたわけです。そのためには顧客の立場に立たなければいけないし、患者を「患者様」と呼ぶようにしようということになったのです。主役は買い手、この場合は患者だからです。ホテルやレストランがお客様と呼ぶのと同じなわけです。医師たちは最初は抵抗したと言いますが、徐々に納得していった。皆がてらいなく「患者様」と言えるようになったときに、この病院は一皮むけたと言っています。

 加えて、サービス業であるので、100マイナス1はゼロだというふうに考えた。一人、いい加減な人間が いたら、99人の努力は水泡に帰すというわけです。そのために相互評価システムを導入した。上司だけでなく、同僚同士が評価をする人事評価システムです。患者さん中心の組織だから、いついかなるときも患者を中心に動かなくてはいけない。そのためには上司だけが評価をしていたのでは目が届かないというわけです。
 これらのことはすべて、「病院はサービス業である」という定義から出発しているのです。


─そして、顧客満足を得る?

嶋口●
そうなります。先ほど、ビジネスモデルは儲かる仕組みと言われましたが、そうではなく「顧客を創造できる仕組み」である必要があります。ドラッカーが言うように、事業の唯一の目的は、「顧客の創造」です。利益は結果にすぎない。仕組み革新をするためには、次に千客万来の仕組みを作らなければいけない。千客万来とは、千人のお客様それぞれが、最低10回は来てくれる仕組みです。そういうモデルを目指す必要がある。そのためには当然顧客満足が重要になります。その上で、顧客とどうやってリレーションを持つか。お客様が喜んで来てくれるような仕組みが必要なわけです。

 古い例で言えば、ベニハナ・オブ・トーキョーがそうです。「レストランはエンターテインメントの舞台」という定義をして、シェフが8人掛けの火鉢テーブルを舞台に、ステーキを焼くという行為をショーに仕立てました。内装も日本から民家を解体して持っていって作り、店全体をステージにしたのです。バーカウンターは一種の桟敷席に見立てました。

 青梅慶友病院の場合は、一人の患者に一人の担当者がつく一人一任対応を導入した。サービスの重要な柱として食事を位置づけ、フードサービス部を設けて個人個人にあったおいしさを追求した。病棟ごとに月に100 万円程度の予算を配分して、患者の喜びのために使い切らせたほか、面会時間を自由にしたり、臭いをなくしたりなど、多くの工夫を施しました。

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