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- 2006/12/04 掲載
【中国ビジネス最前線(2)】中国人の職人を集めて起業した企業のコスト削減策
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昆明欧海科技開発有限公司の社屋
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そこで常に同じルートで送るのではなく、そのときどきの最安のルートを確認する。ときに上海経由、ときに広州経由、そしてときにはバンコク経由といった具合だ。雲南省はベトナム、ミャンマー、ラオスと隣接しており、その立地から昆明の空港は、ベトナム、ラオス、ミャンマーのほか、カンボジア、タイ、マレーシア、シンガポールなど東南アジアと中国を結ぶハブ空港となっている。中国の内陸で起業しても、場所次第で運送にコストダウンが図れる訳だ。
コストダウンの話が出たのでIT関連でのコストダウン策も紹介しよう。まずはIP電話。中国では中国電信(China Telecom)をはじめ、さまざまな企業がIP電話のサービスを提供している。その中で同社は地元雲南のキャリア「雲南商務網」を採用した。
社長である葵氏でなくとも、同社が日系企業である以上、日本や香港などに電話する機会が結構あるのだが、IP電話を導入したことで大幅なコストダウンを図ることができた。日本までの通話料が1分につき、8元(120円)から0.8元(12円)となったのである。ただし音質は従来の電話の音質に比べて良くないため、葵氏だけは携帯電話で通話しているという。
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工場内の様子
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そういった社員の無駄な行動が上記のシステムを導入したことによりできないようになった。社員がシステム管理者に対し理由を説明し、許可がおりたときのみWEBブラウジングができる仕組みになっているほか、非インターネット利用時の例えばゲームなどのむだなPCの利用についてもこのネット管理システムは監視する。
またこのルーターの機能を利用した昆明香港間のVPN接続も行っている。やりとりするファイルは主にエクセルファイルなど、さして大きなファイルを送るわけでないので速度に不満はないそうだ。
昆明にはPCショップが並ぶ大きな電脳街はあるが、同社が導入したルーターは昆明では販売されていないので、同社のシステム担当者は広東省深セン市で購入しひとりでシステムを構築した。余談だがこのシステム担当者は、元々理工系の人間でなく学生のときは会計を勉強をしていたというから驚きである。
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昆明歐海科技開発有限公司 総経理(社長)の葵文勝氏 |
会社に対する危機感ということについては社員はわりとすんなり理解したという。マイホームをローンを借りて購入した社員が多く、会社が潰れればまずいといったことから理解を深めたとか。それよりも社員に日報のような書類をつける習慣がなく、これを改めさせる教育に苦労したという。
また中国人自身、自分の仕事はしても自分の範疇外の仕事はしないことから、同社において各部門内はしっかりしていても、他部門との連携ができないという問題にも直面した。中国はでよく聞く話で「中国人はひとりなら龍になるが、十人集まれば蛇となる」という言葉があり。個人では能力はあるのに、複数人集まると悪性の平等意識なのか一番遅い人に足並みを揃える習慣がある。このような問題に葵氏や講師の日本人は頭を悩まされた。
ISO9001 QMSを無事取得しても、ISO9001では随時向上していくことが求められるため3ヶ月ごとに内部審査がある。取得する際は社員一丸となりがんばるものの、取得後は元の仕事習慣に戻ろうとする動きがあるため、審査の際に引っかかってしまうことがあったという。取得後現在までに2回の審査があり、回を重ねるごとに若干よくなっているものの、まだまだこの苦悩は続いているそうだ。
以上のようにISO9001 QMSの取得と更新にかなり苦労しているが、取得したこと自体は、社員が増えつづけ、葵氏が社員全員を見ることができなくなっている今、モノづくりのルールが体系化されて結果的に同社にとってコストダウンに繋がっている。
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