- 2006/02/21 掲載
野村総研、日本版SOX法に関するアンケート調査結果を発表
野村総合研究所(以下、NRI)は、日本企業を対象として日本版SOX法※1に関するアンケート調査を実施した。その結果、9割近い企業が日本版SOX法の導入検討が進められていることを認識しており、6割以上の企業が法律施行に対する何らかの取り組みを開始していることがわかった。しかし、その取り組みは、現時点では受け身的であり、法律施行の目的である「財務報告の適正化」に加えてERM(エンタープライズ・リスク・マネジメント)の仕組み構築や企業価値向上に向けた本格的な取り組みについては、まだ、多くの課題があると分析している。
本アンケート調査は東証1部、2部、東証マザーズ、JASDAQに上場する主要企業を対象として2005年12月に実施し、380社※2から回答を得ている。
日本版SOX法の検討が現在進められていることについては回答企業の86.1%が認識しており(図1)、
2005年7月に金融庁が公表した公開草案については61.2%の企業担当者が確認したと回答している(図2)。
また、現時点で何らかの対応(社外専門家への相談、プロジェクトの立ち上げ、責任者の任命など)を開始している企業は63.4%と非常に多いことが分かった(図3)。
しかしその内訳は、「社外専門家への相談」(61.9%)や「プロジェクトの立ち上げ」(31.0%)、あるいは「責任者の任命」(34.7%)など、具体的な取り組みに入る手前の、いわば準備段階の取り組みが多く、「具体的な作業を実際に開始した」という回答は23.0%にとどまっていることに留意しなければならない(図4)。
業種別の比較では、日本版SOX法に対する認識および対応状況の両面において、金融業界の取り組みの高さが目立つ一方、サービス業や商業等は他業種に比べ少し遅れているという状況も浮かび上がっている(図5~6)。
また、日本版SOX法への対応負担については「非常に大きい」と「大きい」を合わせると80.5%もの回答になり(図7)、
負荷の大きさを実感している様子が伺える。取り組みに対する意識としては、「多少のコストを掛けてでも高レベルを確保」したいと回答した企業は16.1%であり、「他社と同等のレベルを確保」(47.1%)や「あまりコストを掛けず必要最低限を確保」(36.8%)という回答が多数を占めるなど、やや受け身的な側面も否めまない(図8)。
対応プロセスの中では特に「統制の文書化」が難しい(61.3%)という認識であることも分かった(図9)。
一方で、SOX法対応の先進国である米国の状況をみるとSOX法への対応に関しては、「リスクの洗い出し」、「統制業務への適用」、「社員教育の徹底」など、リスクマネジメントの仕組み構築がより重要であると認識されている。また、米国では毎年必要となるリスクマネジメントシステムの運用コストの増大が大きな問題となっており、仕組み構築に先駆けた「リスクの洗い出し」、「リスクの重要度の特定」などが、その運用コスト抑制のために極めて重要であるとの認識に至っている。
以上から、現時点で日本企業は、日本版SOX法に対する認識は高いものの、受け身的な対応が中心となっているため、中長期を見据えたERMの仕組みを本格的に構築するという全社的な取り組みにシフトしなければならない、とNRIでは分析しているという。そして、そのためには「リスクの洗い出し」や「リスクの重要性の特定」など、事前の検討が極めて重要になると考えられる。
(注1) 昨年7月に金融庁企業会計審議会から「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(公開草案)」が公表された。これは“日本版SOX法”のドラフトに相当すると考えられており、2006年通常国会にて、現行の証券取引法を包含する新しい法律として検討が進められている「金融商品取引法」の一部として制定されると見られる。これにより内部統制システムの外部監査が義務化される見通しである。
(注2) この380社は全て米国市場には非上場
関連コンテンツ
PR
PR
PR