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- 2023/08/15 掲載
JALグループでも導入、「脱炭素」ATR航空機は何がスゴい?魅力に迫る
連載:「北島幸司の航空業界トレンド」
環境に優しい航空機メーカー、ATRとは
ATRは、1981年に創業したエアバスとレオナルドの共同事業体。日本でも着実に販路を広げる、リージョナルターボプロップ機を製造するフランスの航空機メーカーだ。貨物専用機、短距離離着陸機を含め、2機種4種のラインアップで30人から最大78名乗り旅客機と貨物機を用意する。ライバルのデ・ハビランド・カナダ・ダッシュ8-400が生産数を落とす中、日本でも同型機の代替機として徐々に機体数が増えてきている。
ATRは、世界の大都市から交通が不便な地域に至るどんな場所でも、人や地域社会、ビジネスに航空輸送手段を提供することを目指す。リージョナルジェットと比べてCO2排出量が45%少なく、燃料消費量も45%抑えられるため、地域路線用として最適かつ環境に優しい。
日本では、2015年に1機のみで運航を行う熊本の天草エアラインが初導入した。次に鹿児島を拠点とする日本エアコミューター(JAC)、北海道の北海道エアシステム(HAC)、オリエンタルエアブリッジ(ORC)が次々と導入し、機材数を増やしている。間もなく運航を開始する新潟拠点のトキエアも、ATR機の72-600型を2機導入した。
また、ANAとJALは、リージョナルのターボプロップにデ・ハビランド・カナダ・ダッシュ8-400を導入した。ANAグループでは2010年から、JALグループでも2016年から運用しており、ANAグループでは近い将来退役機が出て来る模様だ。日本市場では、導入機数が増えていくことなりそうである。
世界初、SAF100%を使用した実証フライトを実行
ATRは2022年6月21日に、世界で初めてSAFを100%使用した実証フライトを行った。スウェーデンのリージョナル航空「ブラーテンス」の航空機を使い、チーフパイロットのシリル・シザブイロス氏、副操縦士のジャン・ピエール・マール氏、飛行試験整備士のパスカル・ドーサン氏が、スウェーデン南部のマルメ空港を離陸した。両方のエンジンに 100% 持続可能な航空燃料を使用した飛行は約1時間20分でストックホルム近郊のブロンマ空港に到着した。この歴史的な記録は、ブラーセンズおよび SAF プロデューサーのネステとの提携により達成された。
シザブイロス氏は、「100%SAFの使用は、認定され次第、標準的な運用となるでしょう」とコメントした。
パリ航空ショーでの発表
ATRは、取締役会メンバーのエアバス社とレオナルド社が、2022年9月17日付で新しい最高経営責任者(CEO)にナタリー・タルノー・ロード氏を任命したと発表した。4年間の任期が満了するステファノ・ボルトーリ氏の後任となる。ロード氏は、2005年にエアバスに入社しさまざまな上級職を歴任した。エアバスヘリコプターのグループ会社NH Industriesの社長兼上級副社長で、NH90型プログラムの責任者を務めていた。 【次ページ】新CEOが語るATRのビジョンと戦略
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