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  • 2020/08/19 掲載

マスクでも認識可能、「顔認証+温度検知」で“職場クラスター”を防げ

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新型コロナウイルス感染症はまだまだ予断を許さない状況にある。企業や不特定多数の人々が行きかうパブリック空間では、いかにウイルスを持ちこませないかが水際対策のポイントだ。恐れるべきは、体調不良者を見逃すことによるクラスターの発生である。この観点で今注目を集めているのが、入退室時における体温モニタリングだ。AI画像認識による高速かつ実用に堪える入退室チェックを実現し、同時に体温検知も行える最新ソリューション開発企業に話を聞いた。
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職場クラスターをどう防ぐ?
(Photo/Getty Images)

オフィスに求められる新たな要素

 情報化社会が進み、企業が保持する情報の価値は高まる一方であるが、セキュリティに対する危機感の度合いは企業によってさまざまである。ここでは、セキュリティ対策として有効な手段の1つである「入退室管理」について考えてみよう。

 対策をしている企業では、社員にICカードタイプの社員証やスマートフォンアプリを配布し、社屋や執務室への入退室管理を行っている。それが不審な人物の侵入や機密情報漏えいの大きな抑止力になっていることは確かだ。

 しかし、ICカードやスマートフォンには紛失・盗難のリスクがつきまとう。一度奪われてしまえば、社外の人物が簡単に成りすますことができるし、故障や破損といったトラブルからも免れず、運用を続けるかぎり誰かが管理を担わなければならない。

 一方で、入退室管理をまったく行っていない企業は、そこまで手が回らなかったり、リスクを想定していない中小企業が多い。だが、企業規模が小さいからといって狙われない保証はない。むしろ、そうした企業の脆弱(ぜいじゃく)性を狙う犯罪も起こっている。

 さらに、現在は新型コロナウイルス感染症という社会課題がある。感染拡大を防ぐ観点から、企業は社員の体調管理にも気を配る必要が出てきた。万が一、“職場クラスター”が発生してしまったら、事業継続上のリスクにもつながるため、各社対策に頭を悩ませているだろう。

「0.5秒で顔認証+温度検知」の最新技術

 そうした中、入退室セキュリティと健康モニタリングという2つの課題をまとめて解決するシステムが現れた。日本コンピュータビジョンのAI温度検知ソリューション「SenseThunder(センスサンダー)」がそれだ。同社は、2019年5月、AI画像認識技術の専業ベンダーとして誕生した。

 「SenseThunder」のベースには、AI画像認識による顔認証技術がある。世界有数の高い技術力を保有する海外スタートアップの顔認識アルゴリズムを採用し、同社が日本市場向けにカスタマイズさせて完成したものだ。

 同社の田端 章人氏は、「生体認証による入退室管理は指紋認証や静脈認証が先行しましたが、前者はリーダーがすぐに汚れる、後者は装置がかさばるなどの問題点がありました。顔なら非接触での検知が可能で、ICカードやスマートフォンのように紛失・盗難のリスクもありません」と顔認証の利点を指摘する。

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日本コンピュータビジョン
プロダクト本部
マーケティング部 部長
田端 章人氏
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日本コンピュータビジョン
プロダクト本部
マーケティング課 課長
中島 宏幸氏

 顔認証技術とサーモグラフィーカメラ機能を組み合わせ、カメラに映った人物の熱分布を取得し、そのうち最も高い部分を温度として表示することができる。パートナーである海外スタートアップは、世界レベルで感染拡大が始まった2月半ばにこの追加機能の開発に着手、3月上旬には完成させたという。それを組み込んだソリューションが「SenseThunder」だ。



 同社の顔認識アルゴリズムは、顔を3Dの立体画像として捉えることができ、マスクをしていたり、横を向いていたりしても認識できる。カメラを注視する必要はなく、通り過ぎるだけの自然な動作で利用できるというのが大きな特長だ。しかも、検知スピードは体温表示も合わせて0.5秒と高速だ。表示される体温も±0.3℃の精度を誇る。

 そして何よりコンパクトである。本体は少し大きめのスマートフォンサイズといった大きさで、その上部にサーモグラフィーカメラが取りつけられている。スタンドに設置して社屋のロビーに置いたり、入退館ゲートに増設したり、執務室のドア前に設置したりと、さまざまな展開が可能だ。

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ゲートに増設することも可能だ

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「SenseThunder-Mini」本体。マスクを着用していても顔を認識し、体温を検知する

 SenseThunderが取得したデータの取り扱いについて、同社の中島 宏幸氏は次のように説明する。

「データに関しては、当社はまったく関知しておらず、データサーバはオンプレミスあるいはクラウド環境でお客さまに用意していただき、管理していただきます。当社がお客さまの入退室データにアクセスすることはありません」(中島氏)


今こそ「人手を介さない」仕組み、すでに導入企業も

 中島氏は、SenseThunderが解決する企業課題を次のように語る。

「まずは、渋滞しない入退室管理が可能になります。検知スピードが高速であるため、社屋のロビーや執務室前が“三密”になるのを避けられます。また、社員の体調管理を自己申告に頼ることなく、仕組みとして実現可能です。発熱者のスクリーニングが可能になるため、執務室内で働く社員の安心感も高めることができます。検温のために専任管理者を立てる必要もありません」(中島氏)


 新型コロナウイルスの感染拡大により、公共施設の入り口でガンタイプの体温計を持つ係員が入館者の体温を測る光景をよく見かけるようになった。これも発熱者を検知するためには有効な手ではあるが、本来ならば「人を介さない」形態が理想である。人を介さない仕組みを実現できる点は、SenseThunderのようなITツールの大きな強みだ。

 4月に発売を開始したSenseThunderを導入する企業は増えている。たとえば、ソフトバンクでは、従業員の感染拡大防止対策ならびに健康管理を目的として、入館ゲートで温度検知と顔認証を実施するために、SenseThunderを導入したという。

「体温管理」がオフィスのニューノーマルになるか

 田端氏は、今日までの市場での手応えを次のように語る。

「顔認証の導入は、日本市場においても着実に進んでいます。ひと昔前は“顔を差し出す”ような感覚に抵抗感があったかもしれませんが、iPhoneやWindows 10での導入によって、そうした懸念は払拭(ふっしょく)されたと思います。顔認証を温度検知と合わせて0.5秒というスピードで高速検知できることに私たちは絶対の自信を持っています」(田端氏)

 また、温度検知の機能にも、長期的なニーズがあるのではないかと期待を寄せている。

「当社で市場調査を行った結果、『不特定多数が集まる施設では、今後もずっと体温チェックを行ってほしい』という声が寄せられました。ウィズコロナの時代は、体調不良のときだけでなく、毎日体温管理を行うのが当たり前になると思います。発熱の可能性がある社員の存在に気づけずに感染を広げてしまうリスクを防ぎ、社員の健康を守るという意味でも『SenseThunder』は役に立てると思います」(田端氏)

 今後、同社ではサードパーティーの管理ソリューションとの連携にも注力していくという。1つのシステムで入退室管理から体温検知、勤怠管理、さらにその先へと、同社の構想は広がるばかりだ。

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