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日本はいつの間にか「人材で勝てない国」となった。経路依存症のわなにはまり、長らく停滞状態にあるためだ。その脱却に向けて、人材を資本として捉え、人材の価値を最大限に引き出す「人的資本経営」の徹底実践が今必要だ。では、どのような変革の方向性を定めれば良いのだろうか。一橋大学 CFO教育研究センター長を務める伊藤 邦雄氏が解説する。

世界から孤立する日本企業に必要な「人的資本経営」への変革

 近年、人的資本経営が注目を集めている。世界的な潮流としても、人的資本開示が求められるようになっており、日本国内でも人的資本経営への変革が急務となってきた。日本国内の企業の現状について、伊藤氏はこう語る。

「かつて『日本の人材は強い』と言われていた時代がありましたが、いつの間にか『人材で勝てない国』になってしまいました。経路依存症のわなにはまってしまったのです。国内の企業の大命題は、人的資本経営へ変革することです。現実を直視し、バイアスを捨て、KPIを策定し、進捗(しんちょく)を確認しながらマネジメントすることが求められています」(伊藤氏)

 経済産業省の産業構造審議会・新機軸部会の中間整理(2022年6月)によると、「現在の勤務先で勤続を希望する人の割合」は52.4%で、アジアパシフィック地区の中で最下位になっている。その一方、「転職意向のある人の割合」も25.1%で最下位である。

「勤続を希望する人の割合も転職意向の割合も最低で、アンビバレントな状態です。つまり、今の会社に長くいたいと思わないが、転職しようとも思わない現状があります。『日本の人事慣行は素晴らしい』と言われていましたが、現在は世界から孤立してしまっているのが現状です」(伊藤氏)

 この現状をどう打破していくべきか、伊藤氏が解説する。

この記事の続き >>

  • ・日本型雇用システムのメンバーシップ型が機能しなくなった理由
    ・人的資本経営の人材戦略に求められる「3P・5Fモデル」とは?
    ・変革のポイント「人的資本開示」のお手本となる2つの企業例

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