- 2020/11/10 掲載
アングル:物色動向の景色に変化、「巣ごもり」沈んでバリュー浮上
[東京 10日 ロイター] - 日本株市場の物色動向が変化してきた。新型コロナウイルスのワクチン開発に期待が高まる中、「巣ごもり」関連などグロース株が沈む一方、運輸株などのバリュー株が浮上している。ただ、テレワークなどコロナによって加速した社会の変革は止まらず、今後はバリュー株とグロース株が循環物色される形で株価全体が底上げされるとの見方も出ている。
米製薬大手のファイザー<PFE.N>は9日、独バイオ医薬ベンチャーであるビオンテック<22UAy.F>と共同開発する新型コロナワクチンの治験で感染を防ぐ有効率が90%を超えたと発表した。経済活動再開への期待が高まり、世界的な株高が加速。米ダウ<.DJI>は初の3万ドルに接近、日経平均<.N225>は29年ぶりに一時2万5000円台を回復した。
ただ、株高の中身はこれまでと変化が生じてきている。ビデオゲーム機を手掛ける任天堂<7974.T>やソニー<6758.T>など「巣ごもり消費」を代表する銘柄が下落する一方、旅行需要の回復期待を背景に、空輸や陸運など運輸株に買いが集まっている。
象徴的だったのは、9日の米株市場でボーイング<BA.N>が14%、クルーズ船運航のカーニバル<CCL.N>が39%、それぞれ急伸したこと。国内でもJR東海<9022.T>が10%以上の上げとなったほか、資生堂<4911.T>などインバウンド関連株も物色された。
ワクチン開発が進み、人の移動が活発化するとの思惑という「とてもわかりやすい材料」(国内証券)で買われている訳だが、中には歴史的な安値圏に位置する銘柄もあるだけに、ワクチンによってコロナ禍が収まる期待が膨らめば、先行き水準訂正が進むとの見方が広がっている。
国内のバリュー株については「第3次補正予算など今後の経済対策における財政規模によっては、株価全体の下支え要因になりそうだ」(野村証券・エクイティ・マーケットストラテジストの澤田麻希氏)との声も聞かれている。
一方、調整局面入りが指摘される「巣ごもり」関連をはじめとするグロース株の相場も、これで終了とはならないとの見方が多い。
岡地証券・投資情報室長の森裕恭氏は「テレワークの推進といった新しい生活様式など社会構造の変革は、コロナを克服したとしても変わらない」と指摘。岩井コスモ証券・投資情報センター長の林卓郎氏は「国内では政府のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進もあり、今後も成長の余地はある。ハイテク株の下げは一時的だ」と話す。
株式市場では、世界的にバリュー株の復権が顕著となっているが、これまで相場をリードしてきたグロース株も将来性がしぼんだ訳ではなく、先行きの相場は循環物色を繰り返し全体が底上げされることになりそうだ。
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(水野文也 編集:伊賀大記)
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