- 2020/10/23 掲載
アングル:自動車業界「バイデンシフト」、燃費基準やEV想定
バイデン氏と現職のトランプ大統領は、ともにミシガンやオハイオといった激戦州の自動車産業で働く人々の票を必要としており、いずれもメキシコや中国の雇用ではなく、米国内の自動車関連の雇用を増やしたいと主張している。ただ自動車や交通関連の政策では2人は対照的で、メーカー側にとってのリスクとメリットは2人のどちらが政権を握るかで大いに違いが生じる。
もしバイデン氏が当選すれば、カリフォルニア州のゼロエミッション規制に再び法的根拠を復権させ、トランプ政権での燃費基準と温室効果ガス排出基準の緩和方針を撤回する見通しだ。燃費基準に違反した場合にメーカーが支払う罰金額も大幅に増える可能性がある。トランプ政権はこうした罰金を廃止した。ただし、連邦高裁は8月に政権の決定を覆す判断を下した。
一方「バイデン政権」は恩恵をもたらす面もある。トランプ政権はEV購入に税制優遇措置を適用することに否定的で、ガソリンを大量に消費するスポーツタイプ多目的車(SUV)の販売促進を優先してきた。しかしバイデン氏は、EVの購入や充電設備拡充に新たな税制優遇を導入すると約束している。これはメーカーが長年要望していた政策だ。
燃費基準に関しては、現在は業界内で対応が割れている。フォード・モーター<F.N>、ホンダ<7267.T>、フォルクスワーゲン(VW)<VOWG_p.DE>などはカリフォルニア州との間で、排ガス削減を目指す独自の取り決めに合意。これに対してゼネラル・モーターズ(GM)<GM.N>、トヨタ自動車<7203.T>、フィアット・クライスラー・オートモービルズ<FCHA.MI>らは、カリフォルニア州の規制に従うのを凍結し、燃費基準の緩和に動くトランプ政権に歩調を合わせている。
そこで問題になるのは、トランプ政権のやり方を支持してきたメーカーが、バイデン氏が勝利した際に、法廷で争おうとするのかどうかだ。
業界団体を率いるジョン・ボゼッラ氏は、メーカーとしてはよりクリーンで安全、かつスマート化が進んだ未来を目指す決意で、「あらゆる関係者」がこれらの目標に向かって一致協力することの重要性をわれわれは理解していると述べた。
とはいえ、バイデン氏が政権を獲得すれば、この「あらゆる関係者」の構成は変わる可能性がある。環境保護団体や労組が、自動車関連政策の決定でもっと影響力を行使したがっているからだ。
自動車業界は伝統的に、民主党側に比べて共和党側に多く献金する傾向はある。ただ2018年以降、その差は以前よりは縮まっているとの調査報告もある。
全米自動車労組(UAW)は4月、正式にバイデン氏支持をしっかりと表明した。もっとも2016年の大統領選では、労組の勧告を無視する形で約3分の1の組合員がトランプ氏に投票している。
UAWの組合員は外国との貿易自由化の協定の影響に懐疑的だ。さらに今懸念しているのは、EVの普及と厳格な燃費基準が相まって、トラックやSUVの製造に携わっている人の多くが職を失うのではないかという点にある。UAWはロイターに、EV生産に移行するとしても、現在ガソリン車とディーゼル車の製造に従事する何万人もの米国の労働者が質の高い仕事を確保できることが必要になると強調した。
(David Shepardson記者、Tina Bellon記者)
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