- 2025/04/24 掲載
NY市場サマリー(23日)ドル上昇、利回りまちまち 株続伸 米中貿易戦争緩和に期待感
米中貿易戦争を巡っては関係筋がこの日、米政権は中国との協議の一環として中国製品に対する関税引き下げを検討する可能性があると明らかにした。ベッセント米財務長官も、中国との貿易を巡る交渉を進展させるには緊張緩和が必要とし、米中が互いに表明している関税率を現在の過度に高い水準から引き下げる必要があるとの見解を示した。
トランプ大統領の関税政策などを巡る懸念から、ドル相場はここ数週間は約3年ぶりの安値近辺で推移。この日はドルに買いが入ったことで 主要通貨に対するドル指数は上昇し、終盤の取引で0.297%高の99.86。
トランプ大統領がパウエルFRB議長を繰り返し非難していたこともドル相場の重しになっていたが、トランプ氏は前日、FRBは金利を引き下げるべきだと改めて主張しながらも、パウエル議長を解任する意向はないと表明。
MUFGのシニア通貨アナリスト、リー・ハードマン氏は、トランプ氏が議長の解任はないと明確に否定したことは、市場にとって勇気づけられるシグナルだったと述べた。
終盤の取引でドル/円は1.27%高の143.435円。ユーロ/ドルは0.86%安の1.132ドル。
暗号資産(仮想通貨)のビットコインは2%高の9万3705ドル。
<債券> 国債利回りがまちまちの動きを見せた。米政府高官が対中貿易戦争の緩和の余地があることを示唆したほか、トランプ大統領がFRB批判を後退させたことは、米国債市場に一時的な安心感を与えた。
DWSグループの上級ポートフォリオマネージャー、スティーブン・チャンシ氏は「関税に対してより友好的な結果が得られれば、経済成長は依然として緩やかな軌道にあり、(関税による)一時的なインフレショックも小さくなると予想される。FRBが利下げを再開する可能性を示すだろう」と述べた。同氏は年内2回の利下げを予想している。
指標となる10年債利回りは序盤に大きく低下したが、経済指標の一部に上振れのサプライズがあったため、その後は勢いを失った。
米S&Pグローバルが23日発表した4月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は51.2と、前月の53.5から低下した。ただ、関税の不確実性の中で販売価格指数は上昇した。
3月の新築一戸建て住宅販売戸数(季節調整済み)は年率換算で前月比7.4%増の72万4000戸と、予想を上回った。
10年債利回りは前日比でわずかに低下し4.385%だった。30年債利回りは約5ベーシスポイント(bp)低下して4.83%となった。
一方、2年債利回りは6bp上昇の3.859%。
2年債と10年債の利回り格差は53bpとなり、イールドカーブは平たん化した。
それでも、複数の市場参加者が、二転三転する米国の政策決定が投資家を不安にさせる可能性があると警告している。
ニューヨーク連銀の最新データによると、長期米国債保有リスクに対する投資家の期待する対価を示す指標である10年国債のタームプレミアムは、22日時点で77bpとなった。21日に記録した2014年以来の高水準からは数bp下回っている。
<株式> 続伸して終了した。トランプ米大統領が前日、FRBのパウエル議長を解任する意向はないと明確に表明したことに加え、米中貿易戦争を巡る緊張の緩和に期待感が出てきたことで、市場に安心感が広がった。
米中貿易戦争を巡っては関係筋がこの日、米政権は中国との協議の一環として中国製品に対する関税引き下げを検討する可能性があると明らかにした。ベッセント米財務長官も、中国との貿易を巡る交渉を進展させるには緊張緩和が必要とし、米中が互いに表明している関税率を現在の過度に高い水準から引き下げる必要があるとの見解を表明。これを受け、米株価は大きく上昇した。
アメリプライズ(ミシガン州トロイ)のチーフエコノミスト、ラッセル・プライス氏は「米株式市場はワシントン発の動向を受け力強く寄り付いた」とし、「トランプ大統領がパウエルFRB議長を解任する意図はないと表明したことに加え、トランプ政権が現在、中国に課している関税率が大幅に引き下げられる可能性があるとの見方が背景にある。こうしたことは市場で期待されていたポジティブな材料だった」と述べた。
トランプ大統領は前日、FRBは金利を引き下げるべきだと改めて主張しながらも、パウエル議長を解任する意向はないと表明。ベアード(ケンタッキー州ルイビル)の投資戦略アナリスト、ロス・メイフィールド氏は「市場システムの砦の一つであるFRBの独立性が脅かされたことで、債券やドル相場に圧力がかかり、米国からの資金流出の加速につながっていた」と述べた。
電気自動車(EV)大手テスラは5.3%高。前日発表した第1・四半期決算は71%減益となったが、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が来月からトランプ政権に充てる時間を大幅に減らし、テスラ経営に時間をより割いていくと表明したことを好感した。
航空機大手ボーイングも6.1%上昇。第1・四半期決算は生産や納入が持ち直したことを受け、損失が予想ほど膨らまなかった。
航空宇宙・防衛大手ゼネラル・ダイナミクス(GD)は3.3%安。第1・四半期決算は防衛関連需要の持続を追い風に27%増益だったが、ビジネスジェット機の受注が前期から減少した。
<金先物> 大幅続落。トランプ大統領の発言を受けて景気先行き不安が和らぎ、手じまい売りが活発化した。中心限月6月物の清算値(終値に相当)は、前日比125.30ドル(3.66%)安の1オンス=3294.10ドル。
<米原油先物> 石油輸出国機構(OPEC)が主導する生産調整方針を巡り供給過剰への懸念が広がる中、下落した。この日から新たに中心限月となった米国産標準油種WTI6月物の清算値(終値に相当)は、前日比1.40ドル(2.20%)安の1バレル=62.27ドル。7月物は1.31ドル安の61.31ドルだった。
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