- 2025/04/08 掲載
経済界、トランプショックに危機感=十倉氏「自由貿易体制、岐路に」
トランプ米政権の高関税政策による世界経済の悪化懸念で、東京市場が大幅な株安に見舞われた7日、経済界では「トランプショック」への危機感が広がった。経団連の十倉雅和会長は同日の記者会見で「戦後世界の経済発展をもたらした自由貿易体制が維持できるか否かの岐路だ」と強調。ようやく高まってきた賃上げの機運に「水を差さないことを願う」と語った。
日経平均株価は7日、前週末比2600円超安と過去3番目の下げ幅を記録し取引を終了した。トランプ米大統領が打ち出した相互関税に対しては、中国が高関税で報復。十倉氏は「不透明感が強まっている」と懸念を示した。
米国は、相互関税に先立ち輸入自動車に対する25%の追加関税を発動済み。日本の自動車大手幹部は「関税引き上げ分を米国の販売価格に転嫁すれば、販売台数が大きく落ち込みかねない」と指摘。売り上げ減少を早期にカバーすることは難しく、影響が雇用に及ぶことへの心配も口にした。
電機大手関係者は「東南アジアに生産を移管している企業も多い。相互関税が各国に実行されるなら衝撃だ」と世界の供給網全体への影響の広がりを警戒する。物流ニーズの高まりを追い風に収益を拡大してきた海運業界からも、「荷動きが鈍化する可能性がある。注視が必要だ」(商船三井幹部)と不安の声が上がった。
世界的な株安を招いても高関税政策を撤回しない考えを強調するトランプ氏を翻意させる手だては、今のところ見つからない。十倉氏は「日本は開かれた国際経済秩序の維持・強化で指導力を発揮すべきだ」と、政府が外交力を駆使して貿易戦争を回避するシナリオに望みをかける。
輸入部品に関税がかかれば、米国企業自体にも打撃となる。関西経済同友会の代表幹事を兼ねる宮部義幸パナソニックホールディングス取締役は「トランプ政権の目指す製造業復活につながるのか」と疑問を呈し、米企業との連携も視野に「産業界としても積極的に動きたい」と話した。
【時事通信社】 〔写真説明〕記者会見する経団連の十倉雅和会長=7日午後、東京都千代田区
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