- 2025/01/22 掲載
アングル:FRB悩ますトランプ氏の政策と債券利回り上昇、軟着陸の不安要素に
[ワシントン 21日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は28─29日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で、トランプ新大統領の政策と、利下げを続けているのに利回りが上昇している債券市場という二つの要素に目を向けなければならない。
この二つとも、景気後退や大幅な失業率の上昇なしにようやく物価上昇率がFRBの目標とする2%近辺まで鈍化してきた米経済にとっては問題になりかねない。
失業率はむしろ一時3.4%まで低下し、2024年末時点でも4.1%と、物価上昇圧力を生まずに経済を支えられると多くのエコノミストが考える地点に近い水準だった。物価上昇率は2.5%前後に落ち着き、24年12月の非農業部門雇用は前月比で25万人強増加した。
まさにこれまでのところ、コロナ禍による物価高騰とその後の強烈な利上げを経て、米経済はすんなりと巡航スピードまで軟着陸しようとしている。だがこの先は、トランプ政権下で貿易や移民、その他の分野で政策ががらりと転換する可能性があり、債券利回り上昇で米政府の借り入れや住宅ローンなどの家計の債務のコストが増大している以上、新たな課題に直面してもおかしくない。
ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は先週のシンクタンクのセミナーで「債券市場は信じられないほどぜい弱な感触がある」と語り、この数カ月で利回りが約1%跳ね上がり、30年物固定金利住宅ローンの平均金利が7%に達している点に言及した。
足元の4%台半ばという10年国債利回りは歴史的には正常値かもしれない。しかしザンディ氏は「長期金利がずっと高まる相当なリスクがあると思う」と警戒感を示した。
<前途の不確実性>
来週のFOMCで政策金利は4.25─4.50%に据え置かれ、声明文の内容にもほとんど変化はない見込み。ただFRBはパウエル議長の会見を通じて、今後数カ月の金融政策運営の道筋を定めることはできる。
トランプ大統領は20日の就任演説で、早くもこの先の米経済が直面する不確実性の大きさを明らかにして見せた。例えば政権発足初日に新たな輸入関税するとの約束は、案に相違して実行を見送り、ドル安や世界的な株高をもたらしたが、その後トランプ氏が2月1日からカナダとメキシコの製品に25%の関税を課すことを検討中だと語ると、ドルは下げ幅を縮小し、株価は伸び悩んだ。
FRBはこの関税政策や外国からの報復措置がどのように展開され、物価情勢にどう影響するのかを巡り、既に頭を悩ませている。
またトランプ氏が公約に掲げる不法移民の大量強制送還についても、近年の米経済成長を促進してきた労働力供給を制約し、賃金や物価に上昇圧力を加える恐れがあるとともに、特に住宅セクターなど外国人労働者に依存する産業への打撃が大きいのではないか、というのがFRBの見方だ。
このような不確実性を踏まえ、パウエル氏は24年12月の会見段階で政策運営には「慎重さ」が必要だと何度も繰り返していた。
とはいえ債券利回りの上昇はもう始まっている。FRBが直接コントロールできるのはあくまで短期金利で、長期金利は投資家心理や政府の経済財政政策など金融政策以外の要因にも左右される。
そして現在の長期金利上昇が、将来のインフレ高進とFRBに対する「不信任」だとみなされるとすれば、物価目標達成のために予想物価への働きかけが大事と考えるFRBとしては、それなりの対応を迫られるかもしれない。
<経済圧迫の懸念>
物価連動国債利回りなど市場ベースの予想物価上昇率は、まだそうした心配を引き起こす領域には入っていない。予想物価は直近数カ月で上向いたものの、まだ過去平均の範囲内にとどまり、FRBの物価目標から外れていないと想定されている。
それでもこのところの債券市場の動きは、米政府の債務が増大し、世界の投資家が米財政の先行きを巡るリスクに対してより高いリターンを要求し続けるのではないかとの長期的な懸念を提示するものだ。
FRBのウォラー理事が先週、物価上昇率は減速し続け、従来予想されているより早期かつ恐らく大幅な利下げが可能だと楽観的な見解を示すと、利回り上昇はやや鈍化した。
ただ長期金利がここからさらに上がれば、最終的に経済を圧迫し、FRBや政治家が期待する景気拡大局面の持続が危うくなる。
短期的に見てもFRBにとって利回り上昇は重大な影響を及ぼす。例えば長期債保有高の圧縮ペースをどうするかだ。他の条件が同じなら、FRBの保有高圧縮は長期債利回りの上昇圧力につながる。
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