- 2024/10/02 掲載
アングル:第3四半期の市場は大荒れ 円キャリー解消が波乱の幕開け
[ロンドン 30日 ロイター] - 第3・四半期の金融市場は大荒れとなった。世界の株価や米国債はおよそ6%、金は約15%、円は11%も値上がりし、原油は17%急落。この間、主要中央銀行が行った利下げ幅の合計はコロナ禍以降で最大だった。
波乱の幕開けは、米経済指標の悪化と日銀の追加利上げ観測が重なり、普段は落ち着いている円相場のボラティリティーが高まったことだ。
数週間のうちにMSCI世界株指数の時価総額6兆ドルが消失し、特にハイテク株の売りがきつくなった。また市場では米連邦準備理事会(FRB)の年内想定利下げ回数が1―2回から一気に5―6回に膨らんだ。
ソシエテ・ジェネラルのキット・ジャックス氏は「第3・四半期最大の出来事は、円キャリー取引の解消だった」と振り返る。低利の円で調達した資金を高利回り資産に投資する取引が次々に巻き戻されたことに、弱い米指標が加わって市場の様相がまさに一変したという。
ただその後は金利低下見通しが「救いの神」となり、8月末までに世界の株価は持ち直しに転じた。
特に中国は、政府が金融緩和や不動産てこ入れ策などを打ち出したこともあり、株価の反発が目立った。こうした中国の政策効果は他の新興国株も押し上げた。
フランクリン・テンプルトンの新興国株ポートフォリオマネジャー、クラウス・ボーン氏は「新興国株が反転するには中国が回復しなければならない。中国の影響力は非常に大きい」と述べた。
<マグニフィセント・セブンは明暗>
それでも混乱の傷跡はなお残されている。米国の超大型7銘柄「マグニフィセント・セブン」のうち、エヌビディアとマイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、グーグル親会社アルファベットの足元の株価は、第3・四半期初めの水準を下回ったままだ。
とはいえアップル、メタ、テスラの株価は第3・四半期を通じてそれぞれ9%、13%、32%上昇し、エヌビディアも年初来では145%高を維持し、明暗が分かれている。
コモディティーに目を向けると、中東情勢の緊張が高まり続けているにもかかわらず、原油は第3・四半期に17%下落した。
反対に金は、中東情勢緊迫やドル安が追い風になって最高値を更新し、第3・四半期としては2016年以降で最も好調な値動きを記録する見込みだ。
欧州市場もボラティリティーが跳ね上がった。フランスでは、極右勢力の台頭に伴って国債利回りのリスクプレミアムが急拡大した結果、5年国債利回りはギリシャよりも高くなってしまった。
またユーロは、ポンドやスイスフランに対して下落した。
ディストレスト債専門に投資するグラマシーは、フランス国債の利回り上昇と、対ドイツ国債利回り格差が80ベーシスポイント(bp)に達した事態は、2年前に英国で当時のトラス首相の財政運営を巡る懸念を背景に国債利回りが高騰した局面を思い起こさせたと解説した。
<影落とす米大統領選>
11月5日には米大統領選が控えているため、第4・四半期も市場に平穏さが戻ってくる可能性はない。
BofAのアナリストチームが強調するのは、特に市場環境が不安定化していない場合であっても、米国株投資家の不安心理の度合いを示すボラティリティー・インデックス(VIX、恐怖指数)は大統領選の年の7月から11月にかけて25%前後上昇するという点だ。
大統領選結果がFRBの政策運営に影響すると投資家が判断すれば、市場のボラティリティーはさらに大きくなってもおかしくない。
JPモルガンのエコノミストチームの試算では、共和党候補のトランプ前大統領が当選し、中国の輸入品全てに60%、他の地域からの輸入品に最低10%の関税が適用されると、米国の物価上昇率は2.4%上振れし、ドルは4-6%高くなるという。
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