- 2024/09/25 掲載
米財政、次期政権下で一段と悪化 政治二極化で交渉困難=ムーディーズ
[ニューヨーク 24日 ロイター] - 格付け会社ムーディーズは米国の財政について、誰が次期政権に就こうと、政治的な二極化を背景に債務負担の軽減に必要な措置の交渉が困難になるため、状況は一段と悪化するとの見方を示した。
ムーディーズは24日に公表した報告書で、11月5日の大統領選挙で民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領のどちらが当選しても、米国の財政状況は弱体化する可能性が高いと指摘。
「債務返済能力の低下により財政力が徐々に弱まるため、次期政権は財政見通しの悪化に直面する」とし、「こうした傾向を抑制し、財政赤字の抑制に役立つ政策措置がなければ、米国の信用に対し、財政力の悪化が一段と大きな重しになる」とした。
米国の財政赤字は、向こう5年間は毎年、国内総生産(GDP)の7%に相当する水準になると予想。2034年までに9%に拡大する可能性があるとし、実際にそうなれば、債務の対GDP比率は34年までに130%と、23年の97%から上昇すると試算した。
その上で「財政赤字を削減し、その赤字を補うための新たな借り入れを抑制し、利払いの増加を鈍化させるための有意な政策措置がなければ、米国の財政力は大幅に弱まる」と指摘。「軌道修正のための政策措置が取られなければ、こうした債務動向は一段と持続不可能となり、(最高位の)『Aaa』格付けに矛盾する」と警告した。
ムーディーズはまた、米国の財政見通しにとって決定的な要因となるのは大統領選の結果だけでなく、11月の選挙で決まる連邦議会の構成も影響すると指摘。「分裂した状態が続き、次期政権による抜本的な財政改革は阻止されると予想している」とした。
トランプ氏は先月、米国の大統領は連邦準備理事会(FRB)の決定に発言権を持つべきとの考えを表明。ムーディーズはこれについて、金融政策決定に対する政治的影響は信用に対するマイナス要因になると指摘。米金融市場に対する投資家の信頼に影響が及ぶ可能性があるとした。
主要な格付け3社で米国債に最高位の格付けを維持しているのはムーディーズのみ。ただ、ムーディーズは23年11月、米財政赤字の高止まりと債務支払い能力の低下を理由に、米国債の格付け見通しを「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ」に引き下げている。
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