- 2024/09/13 掲載
新興市場投資家、トランプ氏政権返り咲きを懸念
[12日 ロイター] - 米大統領選挙戦は接戦が続き、新興市場への投資家の間で不安が募っている。トランプ前大統領が政権に返り咲けば新興市場に打撃となりかねないためだ。
新興市場は過去数年間、プレミアム市場に比べてさえなかったものの、最近は米国金利の低下見通しを受けて先行きに明るさが見えてきたばかり。しかしアナリストらはトランプ氏再選の場合、貿易障壁が強化され、インフレ率上昇とそれに伴う金利の上昇が勢い付いてドルが高くなり、最終的に新興市場に再び重石になると懸念している。
「ロイター・グローバル・マーケッツ・フォーラム」でピクテ・アセット・マネジメントのシニア・マルチアセット・ストラテジスト、アルン・サイ氏は「通常、底力を備えた経済成長や持続的なディスインフレ、ドル安は新興市場のマクロ環境としては良好だ」と話す。ただ、新興国は厳しい局面に立つとの見通しを示した。理由として、中国経済が依然、世界経済の足かせだと指摘。さらに、米国による対中関税率の引き上げと世界貿易の混乱がもたらす脅威を挙げた。
トランプ氏は中国製品の輸入関税率を60%引き上げることを検討すると表明済みだ。中国経済への影響についてバークレイズのエコノミストは、国内総生産(GDP)が最初の12カ月で2%ポイント押し下げられる可能性があると推計する。
トランプ氏はまた、他の貿易相手国に10%の恒久的な関税率適用を提起している。
オックスフォード・エコノミクスは、こうした関税政策は米中2国間貿易を70%減らし、数千億ドル相当の貿易が消滅するか、貿易相手国が他の国・地域に移る可能性があると指摘する。
米大統領選の民主党候補ハリス副大統領は、10日実施の初の大統領候補討論会で、トランプ氏の関税政策を中流階級への消費税になぞらえた。ただ、ハリス氏もバイデン政権による関税政策を支持しており、将来的には「ターゲットを絞った戦略的関税」を示唆している。
コンサルティング会社ジエンバ・インサイツの創設者レイチェル・ジエンバ氏は「ハリス政権が発足した場合も、(対中政策として高い)関税を引き続き用いる可能性が高いが、クリーンエネルギー部門への投資など他の手段と併用することを重視するだろう」と述べた。
一方、トランプ氏が返り咲いた場合についてUBSグローバル・ウェルス・マネジメントの最高情報責任者(CIO)マーク・ヘーフェル氏は、選挙運動中に脅しのように提唱した対中60%・その他10%という関税率は、実際には低く設定される可能性があると予想する。
米政府は現在、サプライチェーン(供給網)から中国を外して友好国に差し替える「フレンドショアリング」政策を進めているが、これは米国と足並みをそろえた新興国経済を後押しする可能性がある。
ヘーフェル氏は、サプライチェーンの多様化が再加速した場合、インドやインドネシア、マレーシアなどの東南アジアの主要国が恩恵を受ける可能性があると話す。
「グローバルX ETFs」のシニア・ポートフォリオ・マネージャー兼新興国戦略責任者マルコム・ドーソン氏はインドにとって有利だと指摘する。人口構成が魅力的な上、長期的成長の可能性があることや政府が市場に友好的な点を挙げた。
PR
PR
PR