• 2024/03/21 掲載

アングル:日銀QTの思惑、円安のブレーキ役に ドル152円目前で足踏み

ロイター

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Shinji Kitamura

[東京 21日 ロイター] - ドルは34年ぶり高値となる152円に迫る動きを見せた後、上値追いの勢いが削がれ、足踏み状態となっている。政府の円買い介入への警戒感が根底にあるが、一部の参加者の間では日銀のQT(量的引き締め)への思惑が、円売りを抑制する役割を果たしている、との見方が出ている。

<円安に「高い緊張感」と財務相、介入ライン152円との見方不変>

ドルは日銀会合翌日、日本が祝日だった20日の海外市場で一時151.82円まで上げ幅を拡大。昨年11月以来の高値に迫った。その後は、150円前半から151円程度で推移している。

米連邦公開市場委員会(FOMC)が公表した金利・経済見通しで、年内3回の利下げ予想を維持したことを受けて、2回への修正を見込んでいた一部市場の予想が覆り、米金利は低下、ドルも反落した。日銀が10月会合で追加利上げに踏み切るとの市場の思惑を伝える記事が出回ったことも、円高を促したとみられている。

鈴木俊一財務相は21日午前、円相場について「高い緊張感をもって動きを注視していく」と述べ、過度の円安進行をけん制した。日銀の植田和男総裁も19日の会見で、円安が「経済・物価見通しに大きな影響を及ぼすなら、金融政策としての対応を考えていくことになる」と発言した。

多くの市場参加者が想定する円買い介入ラインは依然、34年ぶり安値となる152円付近にある。円が歴史的な安値圏へ接近したことで「介入を警戒して円を買い戻す動きが表面化しやすかったのだろう」(外銀関係者)という。

<日銀QTにわかに関心>

日銀会合後、新たな関心事となってきたのが、QTの思惑だ。日銀は利上げと同時に発表した4─6月の国債買入れ計画で、1年超と3年超、5年超、10年超、25年超の買い入れ上限額を、最大で3500億円引き下げた。

新たな上限は、最近の買い入れ実績を依然、上回る水準であることなどから、今回の減額そのものを驚く声はあまり聞かれない。

ただ、会見で植田総裁が買い入れ額を「将来のどこかの時点で減らしていくことを考えたい」と述べたことで、まだ予定が公表されていない「7月以降の購入方針は未知数ともいえる」(国内証券関係者)と、思惑に火がつく形となった。

バンク・オブ・アメリカの主席日本為替金利ストラテジスト、山田修輔氏は「将来的には国債買い入れの減額が意識され、長期金利の上昇を通じ、円安圧力を緩和する効果が期待される」展開となり得ると予想する。

<「米利下げまで3カ月」の重し>

米国サイドの事情も、円の歴史的安値更新を阻む一因となる可能性が出てきた。FOMCとパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の会見を受けて、20日の米市場では、2年債利回りが1週間ぶりに4.5%台へ低下したほか、金利先物市場が織り込む6月の利下げ確率も、前日の5割から7割近くへ上昇した。

日本の金利先物市場が織り込む日銀の追加利上げ確率は、年内あと1回弱とまだ低い。つまり米国の利下げがそのまま日米金利差の縮小につながり、ドル/円には下落圧力がかかりやすくなる。

専門家の間では、ここ数年売られ続けてきた円は過小評価の状態で、割安感があるとの試算も複数ある。例えば、シティグループ証券が算出する金利差や株価水準、交易条件なども織り込んだモデル上の推計値は現在145円付近だ。

通貨ストラテジストの高島修氏は、短期的には円売りが強まる展開もあり得るとしながら「ここ数カ月単位では、推計値付近へドルが回帰する可能性が大きい」と話している。

(基太村真司 編集:橋本浩)

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