- 2024/02/22 掲載
アングル:存在感増すエヌビディア、米株式市場の行方を左右
[ニューヨーク 22日 ロイター] - 米半導体大手エヌビディアほど、米株式市場の人工知能(AI)熱を象徴している銘柄もない。エヌビディア株の激しい値動きに株式市場全体が左右される展開となっている。
同社が21日の取引終了後に発表した第1・四半期(2─4月)の売上高見通しは市場予想を上回った。近年、これほど注目を集めた決算はまれだ。
同社はAI産業を代表する企業であり、米国の株価指数に占めるウエートも高い。米株式市場は長期金利上昇や早期利下げ観測の後退にもかかわらず、最高値を更新しているが、今後もリスクオン相場が続くかどうかは、今回の決算に対する今後数日の市場の反応で占える可能性がある。
エヌビディア株に連動する上場投資信託(ETF)を運用するグラナイトシェアーズのポール・マリノ最高収益責任者は「今回の決算に対する反応は、市場そのものに対する信任投票と見なすこともできる。エヌビディアの決算が予想を上回っても株価が下落するようなら、市場に不安が広がっていることになる」と述べた。
エヌビディアの株価は昨年3倍に上昇。今年も40%近く値上がりしている。過去1年間の株高をけん引してきた超大型ハイテク7銘柄「マグニフィセント・セブン」の中でも際立ったパフォーマンスを見せている。
エヌビディアの株式時価総額は昨年半ばに1兆ドルの大台を超えた。今月にはアマゾンとアルファベットを抜き、時価総額で米国3位となった。ただ、その後は株価が下落し、現在は5位に後退している。
エヌビディアは時価総額が大きく、S&P総合500種指数など主要株価指数の値動きを大きく左右する。同指数は今月、最高値を更新したが、20日の取引終了時点で同指数の上昇分の4分の1以上はエヌビディア株の急騰によるものだ。
株価急騰の背景にはAIブームで半導体の需要が拡大し、業績が大きく改善していることがある。通期の売上高は前年の2倍以上の600億ドル超、純利益は300億ドル近くに急増した。
アナリストが急ピッチで業績予想を上方修正しているため、株価が爆発的に上昇しているにもかかわらず、予想株価益率(予想PER)は低下している。
LSEGのデータによると、今回の決算発表前の予想PERは31倍。1年前は47倍だった。
オプション分析サービス「トレード・アラート」のデータによると、エヌビディア株のオプションは21日遅くの段階で、決算発表後の2日間で上下いずれかの方向に10%前後の値動きがあるとの見方を織り込んでいる。エヌビディアの時価総額は約1兆7000億ドル。10%の値動きはクアルコムやコムキャストの時価総額にほぼ匹敵する。
エヌビディアの株価は、昨年2月と5月の四半期決算発表の翌日にそれぞれ14%、24%急騰したが、最近の四半期決算への反応は相対的に鈍かった。
オプション市場では今後数日の値動きについて、さまざまな見方が浮上している。21日終値は674.72ドルだが、一部のトレーダーは今週末までに500ドルを割り込むと予想。一方で2倍近い1300ドルに上昇するとの見方もある。
エヌビディアはAI産業を象徴する存在だが、同社だけがAIへの熱狂で恩恵を受けているわけではない。スーパー・マイクロ・コンピューターやアーム・ホールディングスも、最近は押し戻されているものの、株価が高騰している。
半導体・ハイテク部門以外でも、さまざまな業種がAIへの投資を進めている。S&P500企業の今年1─2月の決算会見では38%の企業がAIに言及。AIが産業や市場の大きなテーマとして定着した昨年第2・四半期の水準をわずかに上回った。
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