- 2024/02/05 掲載
インタビュー:1月日銀会合後に円債買い、秋からオープン外債にも投資=日生・都築氏
[東京 5日 ロイター] - 日本生命保険の都築彰・執行役員財務企画部長は、1月22─23日の日銀金融政策決定会合後の金利上昇を受けて、超長期の日本国債買いに動いたことを明らかにした。秋ごろから、ドルを含む複数通貨のオープン外債投資に新たに取り組んでいるとも述べた。ロイターとのインタビューで話した。
インタビューは2日に実施した。主なやり取りは以下の通り。
──日銀の金融政策見通しは。
「今年度初めから、24年度上期に正常化に動くとの想定を置いており、見通しは変えていない。春闘をある程度確認した上で4─9月期にマイナス金利を解除するというのがメインシナリオだ。1月の日銀会合と総裁会見では日銀のトーンの前進が認識でき、その確度が高まった」
「春闘の結果が出るのは(4月会合より)少し後だが、その前にいろいろな情報で確度が高まれば、(日銀は)当然4月に動くだろうし、もっとしっかり見極めたいということなら少し後に動く可能性もある。あまり決めつけずにいたい」
──マイナス金利解除後の政策金利のパスをどう考えるか。
「これは予想が難しく、本当に景気や物価の動向次第だろう。来年度は(政策金利を)ゼロに上げていったん終わりかもしれないし、日本経済が堅調で物価も高止まる好循環が見えればもう1回どこかで若干のプラス圏への利上げがあるかもしれないが、メインシナリオでどちらとは決めていない」
「恐らく日銀内部でも、どこまでとはまだ固めていない状況ではないか。いずれにせよ、やるとしても小幅に1回で、米国のように矢継ぎ早に利上げするイメージはない」
──円金利の見通しは。
「3─4月はまた日銀の政策変更があるのではとの思惑から、少し金利に圧力がかかって上昇するとみている。10年金利については23年度末で0.8%付近と予想している。明確に上限を置いてはいないが、大幅に上がるとは思っていない。瞬間的に1%に行く可能性はあるが、さほど高くないだろう」
「ゼロ金利とした後については、値動きがボラタイルになる可能性がある。日銀がさらに利上げするのか、そこで止めるのか、マーケットでも思惑が入り乱れることで動きのある相場展開となりやすい」
「ただマイナス金利解除後の24年度半ばから後半に金利が大きく上昇するとは見ていない。ここでも長期金利が瞬間的に1%をつける可能性は否定しないが、日銀が利上げを続けるとの見込みが出ない限り、1%超えで定着というのは考えづらい」
──23年度下期も4カ月が経過し年度末も近付く中、ここまでの運用状況は。
「下期は日本国債の金利がわれわれの想定外に低下したため、投資は抑制的なペースで行ってきた」
「ただ足もと、本当にここ1週間くらいの話だが、日銀会合が通過して4月か3月にもマイナス金利解除をやりそうだとの観測で金利が上昇してきたので、また買い始めている。これまで通り、投資対象は30年債が中心だ」
──先週(1月24日)には30年金利が約3カ月ぶり高水準の1.86%をつけた。
「当社の負債コスト(利回り)は1.83%だ。30年債利回りが1.8%台に乗せて負債コストに見合う水準であれば投資できるということで、一定程度買っている」
「ただこのあと日銀が政策正常化に動けば、また少し金利が上昇するとみているので、これまでの遅れを取り戻そうと慌てて買う必要はないとのスタンスだ」
──10─12月期は需給データで生保が超長期国債をほとんど買っていないと示され、市場で話題になった。
「年度で見込む円債のアロケーションというのは一応あるが、それを3月までにマストで全部買う必要があるわけではない。もっと金利が上がったところで投資する方がいいと判断すれば、当然、年度見込みの金額に届かないで年度を終える可能性がある。それは次年度に回せば良いだけで、待つことが可能だ」
「目先はマーケットが日銀の政策正常化を織り込むことで金利は緩やかに上昇するとみており、今年度末から来年度初めにかけては、少し(国債を)買えるチャンスが来ると考えている」
──日本国債への投資を抑制した一方で、資金を振り向けた資産はないのか。
「日本国債を買ってない分を振り向けたということはないが、あえて増やしたものを挙げるなら、秋ごろからオープン外債の取り組みを少し始めている」
「ヘッジ外債は為替のヘッジコスト高騰で投資は難しいが、米経済がわれわれの想定以上に強く利下げ時期が後ずれし、為替の円安基調が当初の想定より長く続きそうとの見立てから、一定程度オープン外債に投資できるのではないかと考えた」
「オープン外債は、オプションを活用しながら円高リスクを抑えつつ、米ドルを含む複数通貨に分散して、ソブリン債に投資している」
──「金利のある世界」に向かう中、24年度運用計画の展望は。
「日本国債の金利は、過去4─5年と比べると当社の負債コストに見合う水準になりつつあり、これが続けばわれわれには大変良い環境になる。これまではリスク削減の目的で投資するという側面も強かったが、しっかり金利が出てくることで、ポートフォリオ分散の中でリターン面も含めた円債投資を考えることになるだろう」
(インタビュアー:植竹知子、Brigid Riley 編集:平田紀之)
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