- 2024/02/02 掲載
アングル:航空機不足、ボーイング生産拡大停止で拍車も 中古に脚光
[モントリオール/ダブリン 1日 ロイター] - 航空業界では新型コロナウイルスのパンデミック以降、航空機の供給不足が慢性化してきたが、アラスカ航空機の事故に伴ってボーイングが生産拡大を止められた問題によって、状況がさらに悪化しかねないとの懸念が広がりつつある。このため中古機の取引も活発になっている。
リース会社アボロンによると、ボーイングとエアバスがパンデミックの混乱やその他の供給制約に見舞われたせいで、航空業界は既にコロナ禍前に予定していたよりも保有機が全体で3000機ほど足りない。
さらにボーイングの生産抑制を受け、航空各社はより古い旅客機をより長く稼働させざるを得ない事態に追い込まれている。
航空データ分析会社シリウムのアナリスト、ジョージ・ディミトロフ氏は「供給不足に拍車がかかるばかりで、市場が需給均衡を回復する時期は先に延びている」と述べ、少なくとも2027年までは不足が続くと予想する。
国際航空運送協会(IATA)の見通しでは、今年の航空旅客需要は過去最高の47億人に達する。そうした需要に対応するため、航空各社はより高い対価を払って十分な保有機数を確保しなければならない。
今週、アイルランド・ダブリンで開催された航空リース業界の会合でも、供給不足が大きな話題になった。
リース世界最大手エアキャップのアンガス・ケリー最高経営責任者(CEO)は、一部の航空会社が普段なら期間延長交渉をするリース機を買い取っている、と切羽詰まった状況を描写。これは航空会社が問題はすぐに解決しないと重々承知していることを物語っていると付け加えた。
リース料金も、アラスカ航空機の事故が起きた1月5日以降、跳ね上がっている。ボーイングのMAXシリーズの前の世代に当たる737-800の1月リース料金は月額約22万ドルで、23年1月は18万3000ドル、22年1月は15万6000ドルだった。
ボーイングは、18年と19年の事故に由来する逆風をようやく切り抜けてMAXシリーズ増産に乗り出そうとした矢先、アラスカ航空機の事故が起きて当局から品質管理や安全面の対策を講じるまで生産拡大は認められないと言い渡されている。
<寿命延ばす投資>
シリウムの調査では、航空会社が保有する旅客機の平均使用年数は今年時点で16年と、19年の14年から長くなった。専門家に話を聞くと、通常であれば旅客機の寿命は25年だが、適切な保守管理をすればもっと先まで新型機と同等の安全性を確保しながら飛行できる。
こうした中でアボロンのアンディ・クロニンCEOは「航空各社とリース各社は古い旅客機のメンテナンスに投資し、寿命を4-5年延ばそうとしている」と説明した。
一方、旅客機の供給不足は、航空貨物業界にも影を落としている。通常なら旅客機はいずれ貨物輸送機に転換されるか、解体されて部品が有効活用される。ただ、アエロノーティカル・エンジニアーズのシニアバイスプレジデント、ロバート・コンベイ氏は、転換すべき旅客機自体が少なくなると予想する。
稼働年数を延ばせば、燃費の悪い旅客機が飛ぶことで航空業界として環境目標達成へのプレッシャーが増大する可能性もある。
これまで業界は50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする取り組みをアピールしてきており、複数の業界幹部は供給不足問題があっても目標までの道筋は揺るがないと強調した。
だが、環境保護団体からは、航空業界は燃費の良い航空機の技術に頼り過ぎで、排出量の多い航空機を飛ばさないための計画は見当たらないとの批判が出ている。
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