- 2024/01/31 掲載
日銀1月会合、政策修正「要件満たされつつある」 正常化へ発言続出
Takahiko Wada
[東京 31日 ロイター] - 日銀が22―23日に開いた金融政策決定会合では、近い将来の金融政策の正常化開始を見据えた発言が目立ったことが明らかになった。春闘で高めの賃上げが実現する蓋然性が高まっていることに加え、経済・物価情勢が全体として改善状況にあることを踏まえると「マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満されつつある」との意見が出されたほか、出口戦略の具体的な発言も相次いだ。
日銀が31日、決定会合で出された主な意見を公表した。決定会合では全員一致で大規模な金融緩和の維持を決定した。ただ、展望リポートで物価目標実現への確度が「引き続き少しずつ高まっている」などとしたことで、市場では3―4月にも日銀がマイナス金利解除に踏み切るとの見方が強まっている。
決定会合では、中小企業を含めて賃上げに期待ができ、人件費上昇を受けてサービス価格も高い伸びを続けているとして「賃金と物価の好循環実現の確度はさらに着実に高まった」との指摘が出された。物価目標実現の確からしさを具体的な経済指標の確認を通じ「見極めていく段階に入った」との意見もみられた。
能登半島地震の経済への影響について、丹念に調査・分析していく必要があるとの意見が出る一方で、地震の影響を今後1―2カ月程度フォローし「マクロ経済への影響を確認できれば、金融正常化が可能な状況に至ったと判断できる可能性が高い」との指摘があった。
日銀がマイナス金利解除のタイミングを探っているのに対し、米連邦準備理事会(FRB)を巡っては利下げ観測が出ている。決定会合では、ある委員が「海外の金融政策転換で政策の自由度が低下することもあり得る」と述べた。この委員は「現在は千載一遇の状況」とし、現行の政策を継続した場合には海外を中心とする次の景気回復局面まで副作用が続く点も考慮に入れた政策判断が必要だと論じた。
マイナス金利解除の判断が遅れた場合「2%目標の実現を損なうリスクや急激な金融引き締めが必要となるリスクがある」との指摘もあった。
<出口戦略も発言相次ぐ>
決定会合では、物価目標の達成が現実味を帯びてきているとして「出口についての議論を本格化させていくことが必要だ」との意見も出され、実際に出口戦略を巡って踏み込んだ意見が相次いだ。
ある委員は、どのような順番で政策変更を進めていくかは「その時の経済・物価・金融情勢次第だ」としながら「副作用の大きいものから修正していくのが基本だ」と述べた。
現時点での経済・物価見通しを前提とすると「先行きマイナス金利の解除等を実施したとしても、緩和的な金融環境は維持される可能性が高い」との意見もみられた。
大規模緩和の一環で買い入れてきた上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)について「2%目標の持続的・安定的な実現が見通せるようになれば、買い入れをやめるのが自然だ」との指摘も出された。この指摘をした委員は、2021年3月の政策点検で買い入れ方針を転換して以降、買い入れ額が非常に小さくなっているとして「買い入れをやめても市況等への影響は大きくない」と論じた。
声明文で、金融政策の先行き指針に含まれているマネタリーベースの増加方針(オーバーシュート型コミットメント)についても、マイナス金利やイールドカーブ・コントロール(YCC)に加えて検討していくことが必要との意見もあった。
ある委員は政策変更の前後で市場に不連続な動きを生じさせないよう「コミュニケーション、オペレーションの両面で工夫する必要がある」と指摘。現段階からマイナス金利やYCCの枠組みの解除についての基本的な考え方を「各時点で可能な範囲で少しずつ対外説明していくことは有益だ」と述べた。
<稼ぐ力の向上、「データで判断を」との声も>
早期の出口戦略を見据えた発言が目立つ中、ある委員は、賃金上昇を伴う物価上昇を持続的なものにするには企業の稼ぐ力の向上と顧客満足度の向上のための「人材価値を高める経営」が必要だと話し「それらの進捗に注目したデータに基づいた判断が重要だ」と述べた。
(和田崇彦 編集:宮崎亜巳)
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