- 2023/09/07 掲載
米経済成長、7━8月は「控えめ」 雇用の伸び抑制=地区連銀報告
Ann Saphir Michael S. Derby
[6日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は6日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、労働市場が冷え込み、インフレ圧力が鈍化する中、7月から8月にかけ、経済成長は控えめだったと指摘した。雇用の伸びも全米で抑制されていたという認識を示した。
また、ほぼ全ての地区で、企業は賃金の伸びが短期的におおむね鈍化するという見通しを示した。FRBの利上げは終了したか、もしくは終了に近いとの観測が裏付けられた格好となった。
<物価上昇圧力が鈍化>
FRBは8月28日までに12地区で実施された調査や面談に基づき今回のベージュブックを作成。「大部分の地区で物価上昇率が全体的に鈍化したと報告された」とし、「ほぼ全ての地区で賃金上昇率が短期的に大きく鈍化するとの予想が示された」とした。
また、多くの地区で物価上昇圧力が軽減する中、財(モノ)を中心とした部分で軽減が最も顕著だったと指摘した。
<消費にほころび、移民や住宅問題も報告>
消費については、多くの家計が新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)の間に貯めた貯蓄を使い果たし、借り入れに頼っているとし、消費者部門に若干のほころびが出始めていると指摘。同時に、負債の管理に苦慮する世帯が増加しているとも報告した。
ニューヨーク連銀は、移民問題が地域のセーフティネットの負担になっていると報告。サンフランシスコ地区連銀は「住宅問題、ホームレスを巡る問題、食料不足が引き続き地域社会の課題となっている」とし、「仮設のシェルター(受け入れ施設)やフードバンクではここ数週間、特に高齢者からの需要が増加している」と報告した。
このほか、住宅問題がなお存在し、一戸建て住宅の供給が「依然として制約されている」と指摘。建設は回復しているものの、借り入れコストと保険料の上昇で手頃な価格の住宅の建設が圧迫されていると報告した。
<市場は次回FOMCで金利据え置きを予想>
FRBが9月19─20日の次回連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を現在の5.25─5.50%に据え置くとの見方が広がっているものの、最後となる0.25%ポイントの利上げを年内に実施する余地も残すとみられている。
金融市場は、1年半前に始まったFRBの今回の利上げ局面が終了したかどうかの確率はほぼ五分五分と見ている。
一方、大部分のFRB当局者は少なくとも今のところは利上げを停止することを確信していない。ただ、2022年3月以来の合計5.25%ポイントの利上げで経済が減速し、雇用の増加が抑えられ、インフレが鈍化していると確信している。
7月下旬の前回の利上げ後、そうした見解を支える指標が出ている。過去3カ月の月間雇用者数の伸びは平均15万人で、その前の3カ月間より大幅に減少した。FRBが重視する指標によるインフレ率は7月に約3.3%と、昨年夏の7%から低下した。
このためFRBのタカ派として知られるウォーラー理事でさえ最近は、今後発表される指標を慎重に見極める時間を得るために利上げを一時停止することを支持する意向を示した。
一方、物価はFRBが目標とする2%を上回るペースで上昇を続けており、雇用者数は人口増加に対応するために必要な毎月10万人を上回って増え、経済成長率はFRB当局者が長期的に持続可能だとする年率2%未満をはるかに上回っていると見られる。
これらの全てがインフレ圧力が上振れする可能性を示している。よってFRB当局は直ちに利上げを迫られることはないとしつつ、インフレ率を目標の2%に鈍化させることに向けて一段の金融引き締めが必要かどうかを見極めるために今回のベージュブックに含まれるデータなどを精査している。
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