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新型コロナウイルス感染症の影響により、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)への支出や投資は加速している。その一方、企業がDXを推進する際の人材不足が深刻化して、DX推進の大きな足かせとなっている。企業は今後、どのようなデジタル人材の育成や確保をしていけばいいのか。総務省の情報通信白書などの調査データや政策などを踏まえ、企業のDX推進の後押しとなるデジタル人材のあり方を探る。
日本企業の5割が人材不足を痛感、深刻化するデジタル人材の枯渇
総務省が2021年7月30日に公表した「令和3年版情報通信白書」では、DXを推進する上でのデジタル人材不足の深刻化を指摘している。日本、米国、ドイツの3カ国の企業モニターを対象にDXを進める上での課題に関する調査の結果が示されている。それによると、人材不足を課題として挙げているのは、米国、ドイツ、日本であり、いずれの国でも上位となっている。特に、日本は「人材不足」を感じる企業は5割を超え、米国の約2倍と突出して高い数値だ。
また、同調査では「具体的にどのような人材が不足しているか」を尋ねている。「DXの主導者」や「新たなビジネスの企画・立案者」などの人材が「大いに不足している」、または「多少不足している」と回答した企業が、いずれの国でもほぼ6割以上となっている。
さらに「不足しているデジタル人材の確保・育成に向けて各企業がどのように取り組んでいるか」という問いに対しては、日本では「社内・社外研修の充実」を挙げる企業が多い。その一方、「特に何も行っていない」との回答比率も高く、社内の現有戦力で乗り切ろうとしている傾向が伺える。
米国の場合は「デジタル人材の新規採用」、「デジタル人材の中途採用」、「関連会社からの異動・転籍」が他の2カ国よりも多い。もともと雇用が流動的な国であるが、社内で不足する人材は外部から積極的に登用しようとする姿勢がみてとれる。特に、日本の場合は、デジタル人材の採用は消極的だといえる。
また、日本企業の特徴としては「デジタル人材がIT企業に多く配置されている」ことが挙げられる。「令和元年版情報通信白書」に掲載した独立行政法人情報処理推進機構の調査によると、IT企業に所属するIT人材の割合は、2015年時点で日本が72.0%だった。対し、米国では34.6%、英国では46.1%、ドイツでは38.6%などとなった。ユーザー企業におけるIT人材の確保は、以前からの課題として度々指摘されてきた。
デジタル人材の育成・確保を実現する近道
企業が、DXを推進するデジタル人材を確保するためにはどうすればいいのか。その大きな柱が「社内でのデジタル人材育成」と「外部からのデジタル人材の採用」だ。特に、DXの推進の遅れを懸念している経済産業省は2021年6月、「第4回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」を開催し、「デジタル人材の能力・スキルの見える化」の必要性を検討している。
同検討会では、デジタル人材の能力・スキルの見える化において、育成における現状把握に加えて、適切な目標設定や人材の評価、キャリアアップなどにつながる仕組みを検討していく必要性が示された。
また、能力・スキルの見える化に関するエコシステムのイメージを以下の図のように整理している。
具体的には、学びを通じての能力・スキルの見える化に関するリファレンス/トラストアンカーとして、以下の3つを挙げている。キャリアアップの促進や雇用機会を創出することの重要性を示している。
- リファレンスとしての能力・スキル・知識の体系・標準
- 職種や業務能力との関連性を示す仕組み、能力(評価)を流通させる仕組み
- 評価の信頼性、有用性担保のためのトラストアンカー的(学ぶ内容と評価)な役割と正当性の確保
デジタル人材のスキルや専門性などを確認する手段としては、「デジタルバッジ」の普及も始まろうとしている。これにより、企業はデジタルに精通するデジタル人材の確保や、デジタル人材の流動性を高めていくことが期待される。
「デジタルに適合した企業文化・組織文化の形成」も重要
企業のDX推進においては、DXを担うデジタル人材が能力を発揮・活躍できるようなデジタルに適合した企業文化・組織文化を形成する必要がある。
デジタル人材が活躍できるような環境が準備できなければ、企業を変えるという意気込みを持って入社したデジタル人材も、既存の人材と話や価値観が合わず、異質な人材として排除されてしまうリスクもある。そのため、現在の企業文化を変えて、デジタル人材が活躍できるような企業文化を創っていくことが求められる。
また、一口にデジタル人材と言っても、目的に応じてさまざまな役割がある。その役割を明確にし、適切な人材配置も重要となる。
ガートナージャパンは2021年8月、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に必要となる5つの役割」を公表した。
・役割1:ビジネス系プロデューサー(ビジネス・アーキテクト)
DXによるビジネスゴールを定義し、新たなビジネスモデルを考えたり、DXに関する企画を考えたりする役割を担う。経営層や社内外の意思決定者とのビジネス面でのコミュニケーションにも責任を持つ。
・役割2:テクノロジ系プロデューサー(テクノロジ・アーキテクト)
ビジネスゴールの達成に向けた最適なデジタル技術の特定やその適用によるシステム面の影響の分析、予測などを担う。経営層や社内外のエコシステムのパートナーに対する技術面のコミュニケーションにも責任を持つ。
・役割3:テクノロジスト(エンジニア)
現場で実際にデジタル技術を活用する役割を担う。自動化、データサイエンス、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)などの新興領域に注目しがちだが、確実にDXを推進していくためには、通信ネットワーク、IT基盤、セキュリティ、クラウドなどの既存の領域の役割も重要である。テクノロジストもまた全従業員が対象となる。
・役割4:デザイナー
ソリューション、サービス、アプリケーションのユーザーエクスペリエンス(UX)をデザインする。UX面のコミュニケーション、UXとデザインに関する知識の社内普及に向けた教育なども行う。
・役割5:チェンジリーダー
デジタル技術の導入に伴う働き方(業務、意識など)のシフトの主導、変革の目的やゴールの整理、変革のコミュニケーション計画の作成、関係者全員を巻き込んだ意識と行動変容に向けた施策の計画/展開などを担う。
デジタル人材の育成を実践するためには、能力やスキルの可視化、さらには役割を明確にした上で、適切に人材を配置していくことが重要となるだろう。
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