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広島大学では、2014年に財務系システムおよび人事系システムをクラウド化して以来、全学的な情報システムを次々にクラウドプラットフォームへ移行している。合格発表時や理工系コンピューター利用でそれらは大きなメリットを発揮しているが、利用を拡大する過程で新たな課題に直面する場面もあったという。「AWS Summit Tokyo 2016」において、同学 副理事(情報担当)・情報メディア教育研究センター長 相原 玲二氏が、クラウド活用のその後と課題解決、今後の展望を報告した。
着実に広がり続ける広島大学のクラウド活用
相原氏がAWS Summitに登壇するのは2回目である。広島大学が財務系システムおよび人事系システムをAWSに移行したことを発表したのが、2014年のこの場だった。広島大学は11の学部、11の研究所、11の附属教育機関を持つ総合大学で、総学生・生徒数は約19,000名に上る。比較的規模が大きいこともあって、ここ数年情報システムの充実に力を入れており、クラウド利用を始めたのもその一環だ。それからというもの、同学ではクラウド化を着実に推進、現在では
図1の赤字部分がクラウド環境で運営されるまでに利用は拡大した。利用にあたっては一定のガイドラインを設け、その内容は毎年見直している。
当初、大学からは直接インターネットからVPN接続でAWSへアクセスしていたが、昨年AWSのダイレクトコネクトがSINET経由で利用できるようになったため、こちらでの利用を開始した。現在、同学ではAWSアカウント専用の仮想ネットワーク Virtual Private Cloud(VPC)を5つ所有しているが、そのうち2つをダイレクトコネクトで使用している。すべてをそうしないのは、アプリケーションによってはSSL通信(HTTPS通信)のみでもセキュリティを担保できるものがあると判断したからである。
一時的なアクセス急増に即応でき、コストも"見えない"のが魅力
同学にとってクラウドを活用する利点とは何か。それを端的に示す事例として、相原氏は入試合格発表と理工系学部の研究用ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)環境を紹介した。
近年、入試合格発表のメイン舞台はWebサイトになっている。合格発表当日の発表時間12時になると、公式Webサイトへ普段の100倍に上るアクセスが押し寄せるといい、その状況を示したものが
図2である。
これを見ると、公式Webサイトトップページの搭載されたサーバが最も重要であることがわかる。12時のプラスマイナス10分間、4,500アクセス/秒のバーストアクセスが起きている。このサーバが能力不足だと大幅なレスポンス低下、最悪サイトダウンが起き、アクセスユーザーは合格者の受験番号が記載されたPDFファイルにたどり着けないことになる。そのため、これまで同学では数日前からWebサーバを追加し、キャッシュを増設するなど入念な準備が必要だった。しかし、現在は2日前にAWS上でWebサーバとキャッシュサーバのインスタンスタイプをt2.smallからx3.largeに構成変更し、キャッシュサーバの数を倍増するだけである(
図3、図4)。
そして、合格発表の翌日には構成を元に戻す。AWSに移行したことによって担当職員の対応業務は解消した。そして何より、コスト削減が実現した。相原氏は語る。
「ほぼ数日間の変更であるため、合格発表対応にコストは見えなくなりました。これがオンプレミスだと数倍のコストがかかります。効果絶大です」(相原氏)
【次ページ】 コスト抑制の秘策は「随意契約」による「直接契約」
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