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- 2016/03/08 掲載
脳の神秘を解明した研究――不完全で優れた脳のシステムはコンピュータで実現できるか?
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ソーク研究所の教授であり、この研究に関する論文の共同上席著者でもある、テリー・セジュスキー(Terry Sejnowski)氏は、次のように述べている。
「これは衝撃的な事実であり、神経科学だけでなく、コンピュータ・サイエンスにおいても重要な意味を持ちます。この事実は、我々に脳のしくみに関するまったく新しい視点をもたらすでしょう」
シナプスの決め手はサイズ
シナプスとは、脳細胞(ニューロン)間で信号を伝達する接合部のこと。シナプスは、大きいほど機能が高くなります。つまり、シナプスのサイズでニューロンの記憶容量が決まるわけです。また、大きいシナプスの利点として、強度が高いことや、より確実に信号を伝達できることなども挙げられる。
同チームは、ラットの海馬(脳の記憶中枢)の細胞組織を、3Dデジタルできわめて精巧に再現した。これは、「GeForce GTX TITAN GPU」によって実現したもので、「これまで試みたなかで最高の精度」だと、計算論的神経科学の第一人者であるセジュスキー氏は言います。
この再現モデルと電子顕微鏡によって、チームは特定のシナプスのサイズの違いを測定できるようになった。その結果、シナプスのサイズには約26種類あることと、それぞれのサイズ間の違いはおよそ8%であることを突き止めたという。
1シナプスあたりの情報量は、コンピュータに換算すると約4.7ビット。これまで神経科学者の間では、海馬の各シナプスが保持できる情報量は、ほんの1~2ビット程度だと考えられていた。
【次ページ】脳の“消費電力”は薄暗い電球と同じ
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