『織田信長のマネー革命』著者 武田知弘氏インタビュー
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経済から歴史を読むことの醍醐味
――勇ましい合戦の数々にどうしても目が奪われがちの戦国時代ですが、経済面から見ることでかなり違った視界が開けた気がします。このような経済から歴史を読み解く際のコツやヒントのようなものはありますか?
武田氏■歴史を経済から読み解く際、意外な分野を掘り下げて見ていけば、興味深いことが見つかることがしばしばあります。たとえば、貨幣制度を通して歴史を眺めてみれば、信長がいかに先見の明があったのかということを再認識できます。日本の中央政権で最初に金銀を貨幣として制度化したのは、信長なのです。江戸時代、金銀銅が貨幣として使用されていました。それは信長が作った制度を踏襲したものです。そしてこの貨幣制度は世界の貨幣制度に近いものがありました。だから、明治維新後の日本はスムーズに欧米の資本主義になじめたとも言えます。つまり、信長のつくった貨幣制度は、今の経済大国日本とも通じているわけです。
また、物流の歴史を見てもしかりです。物流の歴史は、信長以前と信長以降ではまったく違います。信長以前、商人はキャラバン隊を率い、私兵を雇って商品を運搬していました。当時は治安が悪いし、道路も整備されていなかったからです。しかし、信長以降、商人は天秤棒一本をかついで、1人で行商に出ることができるようになりました。治安が良くなり、道路も整備されたからです。それは物流を非常に活発化させました。そして信長は、関所での関税を廃止しました。そういった政策は、もちろん商品価格に反映されます。庶民は、他国の商品でも気軽に買うことができるようになったのです。
――現在、日本では不況も続き、また震災の影響も甚大です。今の日本人が、織田信長のような人物から学び取れる点があるとすれば、どういったところでしょうか。
武田氏■信長が、当時の世の中の諸問題を急速に解決できたのは、問題点を直視し、その解決に向かってストレートに突き進んだからだと思われます。戦国時代も今と同じように、いろんな利害関係が絡み、なかなか世の中の問題解決ができにくい状態がありました。しかし、信長は世の中の問題点に対して、ストレートに対応しました。解決を邪魔する勢力に対しては、どんな強い勢力に対しても周到に向き合って、果敢に改革に着手しました。我々や今の政治家が、最も見習わなければならないのは、この点だと思われます。
――今後のお仕事のご予定をお教えいただけますか?
武田氏■2011年の秋には、大日本帝国の経済、社会制度などを俯瞰した本を出版する予定です。大日本帝国の時代というと、「暗黒の軍国主義」というイメージがありますが、実は大きな経済発展、社会発展があった時代でもあります。そういう面を描きたいと思っております。また戦国時代については自分にとって非常に興味を持っている分野ですので、また『織田信長のマネー革命』のような企画を考えて、本を出したいと思っています。
●武田知弘(たけだ・ともひろ)
1967年福岡県出身。西南学院大学経済学部中退。1991年大蔵省入省。バブル崩壊前後の日本経済の現場をつぶさに見て回る。1998年から執筆活動を開始。1999年大蔵省退官、出版社勤務を経てライターとなる。
主な著書に『ヒトラーの経済政策』(祥伝社新書)、『戦前の日本』(彩図社)、『ワケありな日本経済』(ビジネス社)。
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