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導入のしやすさ、低コスト、既存アプリケーションとの容易な連携などから、SaaSに注目が集まっています。この動きは企業だけでなく、経済産業省も同様。同省は、本年度予算で「中小企業経営革新プラットホーム整備事業(仮称)」の成立を目指しています。本稿では、SaaSについて、同法案と同省が推進するプロジェクトについて紹介します。
SaaSとは
SaaSとはSoftware as a Serviceの略語で、簡単に言うと財務会計等のアプリケーションソフトウェアをインターネット等で提供する情報処理サービスのことを指します。その特徴は、ひとつの共通したデータベースを持つということです。つまりある会社の会計処理ソフトで使った会計データを他社の税務処理システムでそのまま利用することができるようになるのです(下図)。ここが従来のASPとは違います。
SaaSの仕組み
つまり、インターネットを経由して、さまざまなシステムを少額のIT予算で使えるようになるのです。
このようにさまざまな業務処理サービスをインターネット上で提供するSaaSは、米国を中心に急速に普及しつつあります。アメリカでは、2010年に1兆円の市場規模と予想されています。
遅れる中小企業でのITの導入
一方で、小規模企業のIT経営デバイド(IT格差)という問題が指摘されています。中小企業の中でさえも、サーバの導入コスト(月10~15万円程度)を支払うことができる企業と、それを支払うことができない企業との間では、IT格差はますます拡大しているのです。
特に、従業員数20人以下の企業を見ると下表にあるように、販売管理費用等との見合いから、情報システム会社も営業のターゲットとせず、放置されています。
SaaSは、このような小規模な企業にも対応できるひとつのカギとなります。
小規模企業のIT利活用の現状
動き出した経済産業省
このSaaSには、経済産業省も目をつけています。
今年度(20年度)予算で、「中小企業経営革新プラットホーム整備事業(仮称)」として18億円を計上し、従業員数20人以下の小規模企業におけるIT活用の底上げと経営力を強化するプロジェクトを始めるのです。
まずは、財務会計・税務申告の電子化を柱に、小規模企業におけるITユーザーの大幅な裾野拡大を図ります。具体的には、財務会計から税務申告まで処理できるSaaSを構築して、50万社以上に普及することを計画しています。
これにより、小規模企業でもサーバやパソコン、ソフトウェアを買わずに、インターネットを経由して少ない額(筆者は月数万円と思っていますが、利用料金はまだ明確でありません)で必要な情報システムを利用できる環境が整います。
経済産業省のSaaSプラットフォーム整備事業
本プロジェクトのスケジュールとしては、今年度にプラットフォームの開発が行われ、一部は利用できるようになるそうです(公表された計画より実際は早く動くようです)。そして、平成22年度から本格稼働となります。ただ、ここで重要なことはSaaSシステムの開発だけではありません。システムを使うための専門家のサポートが必要です。経済産業省ではそのような専門家のサポートも整備することとしています。
SaaS向けガイドラインの策定
また、同時に、SaaSの普及を図るため、サービス提供企業とユーザー企業間で合意することが望ましい共通認識(SLA:Service Level Agreement)のガイドラインを併せて策定しています。
SaaSを利用する企業にとっては、インターネット経由でSaaSベンダー側のソフトウェアを利用し、データをシステム提供企業側に預けることになります。そこで障害が起きた場合に使えなくなる期間の長さ、データ保管状況などが懸念されます。
経済産業省は、このような懸念に対応するため、ユーザー企業とシステム企業の適切な取引関係を確保し、SaaSの普及を図るため、両社で合意することが望ましいサービス内容・範囲・品質等に関する保証基準のSLAのガイドラインを定めました。例えば、サービスの稼働率や障害復旧時間、データのバックアップ、セキュリティレベルなどをSaaS提供企業側が明確にし、ユーザー企業との間で合意するよう求めています。
これからわが国でもSaaSが本格的に動き出しそうです。
わが国の中小企業の生産性が上がることがわが国産業の競争力強化の基盤です。
筆者もできる限り応援させていただきます!!
SaaS向けSLAガイドラインの内容
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