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  • 2008/01/21 掲載

フォレンジックの具体的実施手法と米国の動向(後編)(2/3)

デジタル・フォレンジック研究会理事によるリレー連載「デジタル・フォレンジック機運の高まり」(4)

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デンソー事件から見るフォレンジックの重要性

 2007年2月頃に発覚したデンソー事件は、2006年10月から12月にかけて、中国の軍事企業「中国航天工業総公司」に勤務経験のある同社の中国人社員が、センサーやディーゼルエンジンの燃料噴射装置等の設計図面データ約13万件を社有のパソコンにダウンロードし、自宅に持ち帰って私有のパソコンや外付けハードディスクにコピーするとともに、記憶媒体や電子メールにより、国外に持ち出したのではないかと疑われた事件である。

 同社員は、データをダウンロードしていた時期に、それまでの帰国パターンとは異なり、3回中国に帰国していた。また、ダウンロードしたことが発覚した後には、社有パソコンと私有パソコンの提出に同意した。しかし、同僚の社員に付き添われて帰宅したところ、付き添いの社員を部屋に入れず、自宅に約1時間閉じこもり、その間に私有のパソコンや外付ハードディスクの表面を千枚通しで破壊するなどしてフォレンジック調査を困難にした。

 その後、社有パソコンを調査したところ、データを転送したアクセス記録が残っていたこと、また、複数の記憶媒体を接続した形跡が残っていたが、その一部は発見できなかったこと、さらに、複数の記憶媒体を分析しようとしたところ、データが暗号化され内容が確認できないものや、解読しようとすると記録が消去されるものもあったことなど、疑わしい行為を行っていた。

 しかし、同社員はダウンロードしたデータへのアクセス権限を有すること、および第三者に不正にデータを開示したこと等を特定することが出来ず、親告罪である不正競争防止法の適用は見送られた。2007年3月16日、愛知県警外事課は同社員を社有パソコンの横領容疑で逮捕したが、同社員は自分の研究のため、ダウンロードしたとの主張を変えなかった。その後処分保留で釈放され、中国に帰国した。

 このような情報に関する犯罪としては、国内では不正競争防止法(第21条第1項第5号)に不正競争の目的で行った営業秘密の不正取得行為について罰則が定められており、刑法では、第163条の4に支払用カード電磁的記録不正作出準備行為に関係する情報取得等を行った者に対する罰則が定められているところであるが、一般に情報を不法に領得する行為そのものは、犯罪類型として定められていない。現在、窃盗等の客体となる財物は、有体物及び電気(刑法第245条)であるが、情報については、それを記録した媒体が財物とされているところである。

 フォレンジックは、役員等が粉飾決算等の指示を行うなどの不正を疑われた場合、指示したとされる電子メール・文書の存在の有無や削除の有無などを明確にするなど、身の潔白を証明する手段ともなりうるものである。
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