- 2006/02/13 掲載
沿線利用者の囲い込みを目指す IC乗車券を巡る攻防
Suica、ICOCAに続け。大手私鉄もICカード活用を本格化
「モバイル Suica」は好調なスタート
交通系ICカードの先がけとも言えるJR東日本の「Suica」カード。その発行枚数は累計発行は約1510万枚にも及ぶ。その利用範囲も、駅の中のキオスクはもとより、構内のコインロッカーや自動販売機、さらには駅の外でも「ジョナサン」や「大学生協」など利用可能エリアは拡大を続けている。1月28日より満を持してサービスを開始した携帯対応のサービス「モバイル Suica」の会員数は2週間弱で2万人を突破した。
京阪電車、阪神電車、大阪市交通局、大阪モノレール、阪急バスなど関西の私鉄・バス交通各社が共同で運営する「スルッとKANSAI協議会」が展開する非接触型IC乗車カード「PiTaPa(ピタパ)」。この1月、JR西日本が展開する「ICOCA(イコカ)」との相互乗り入れが実現した。
これにより関西の収容鉄道およびバスの乗り降りは一枚のカードで可能となる。しかしながら今回相互乗り入れしたのは乗車券機能のみ。双方とも電子マネーを物販に利用できる機能も備えているが、電子マネーとしての機能の部分では、各社の思惑が未だ交錯する。
「消費の連鎖」を起こせ
こうした利用範囲の拡大とは別の次元でも、鉄道各社の乗車ICカードを巡る攻防は大きく動き始めている。東京急行電鉄は、2月8日から約1ヵ月、世田谷線のICカード乗車券「せたまる」を活用した沿線商店街への来店促進についての実証実験を開始した。例えば、世田谷線の主要6駅に掲出する電子ポスター(通常のポスターに非接触ICカードのリーダー・ライター端末を装備したもの)に、世田谷線のICカード乗車券「せたまる」をタッチさせた乗客は、東京都世田谷区松原の映画館「下高井戸シネマ」に設置されている専用リーダーに再度「せたまる」をタッチさせることで200円の入場割引が受けられるようになる。
東急電鉄のIC乗車券「せたまる」
さらに下高井戸シネマ内に設置する電子ポスターに「せたまる」をタッチさせることで、下高井戸駅周辺の参加3店舗の割引クーポンがその場で入手できる。電車の乗客がポスターを目印に、映画鑑賞を行い、さらには地元の店舗で買い物をする。まさにこの「消費の連鎖」こそ鉄道各社が目指すものだ。
このようなIC乗車券を使った地域沿線の商店との連携は全国で初めての試み。東京急行電鉄では、今回の実験の利用状況やアンケート結果をもとに、IC乗車券が生活に密着した存在として顧客に提供できる利便性について検証していくとともに、地域カードとしてのIC乗車券の今後の活用方法を模索する。
そもそも鉄道各社にとって自社の沿線でのビジネスの発展はグループ、引いては自社の経営に直結する大きな課題。鉄道各社は自身の鉄道の沿線に住宅やマンションを建設し、百貨店やスーパー、を出店することで人の流入を加速させる。そこに住まう人が増えればそこから鉄道で移動する人も増え、運賃収入もあがるという図式だ。
まさにこの「沿線の消費を刺激し、地域を活性化する」という視点からも、今後乗車券ICカードの活用はますます熱を帯びていくに違いない。
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