- 2005/12/26 掲載
【戦略的マーケティング/第1回】顧客志向を実現する3つのキーワード(3/4)
同じように、顧客志向の一貫として購買プロセスを見た場合、そこにおける非効率性が浮かび上がってくる可能性が高い。しかし、購買プロセスにおける非効率については、過去のマーケティング研究においてほとんど議論されていない。ジェームズ・P.ウォーマック(以下:ウォーマック)とダニエル・T.ジョーンズ(以下:ジョーンズ)は、顧客の購買プロセスから非効率な部分が排除された消費を「リーン消費」と呼んでいる(Womack and Jones 2005)。
彼らは、ポルトガルの自動車ディーラーに注目し、顧客が車を修理してもらうプロセス、つまり整備工場を探し、修理が終わった車を自宅へ持ち帰るまでを八つのステップに分け、各ステップの所要時間を一覧表にまとめた。すると、一連のプロセスには平均で120分かかるが、そのうち価値創造に費やされる時間は53%にすぎないことが明らかになった。残りの47%は、待ち時間などの価値創造には結びつかない時間だった。そこで、ウォーマックとジョーンズは、各ステップを見直し、不要な部分を取り除いた。その結果、総所要時間は69分となり、価値創造に費やされる時間は94%にまで跳ね上がった(図3)。

リーン消費を実現するためには、顧客の待ち時間を削減したり、無駄な動きを取り除いたり、カスタマー・サポートを見直したりする必要がある。だがすべての購買におけるプロセスの時間を短縮化し、合理化すればよいというわけではない。非効率とも思える購買プロセスを楽しむ消費者もいるからだ。郊外のアウトレットモールに行くと、1日中モール内を動き回り、ショッピングを楽しむ人々がいる。彼らにとって、購買プロセスそのものが喜びであり、お気に入りのブランドを探し回ったり、店員とあれこれ交渉したりすることにベネフィットを感じていたとしても、コストを意識することはないだろう。
購入対象となっている製品によっても、リーン消費への期待は大きく異なるはずである。日常反応的問題解決が期待される成熟段階の製品、限定的問題解決が期待される成長段階の製品では、購買プロセスにベネフィットが見いだされることは少なく、リーン消費への期待は大きいだろう。逆に、包括的問題解決が期待される導入段階の製品では、購買プロセスの一部分に娯楽的要素が加わりやすいので、リーン消費への期待はそれほど高くはないかもしれない(Howard and Sheth 1969)。
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